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毎日新聞 2021/11/5 12:35(最終更新 11/5 12:35) 1069文字




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学校(写真はイメージ)=ゲッティ

 山形県酒田市立中学校で女子生徒が今年2月、飛び降り自殺した問題で、市教委がいじめの有無を調査する第三者委員会を設置して、1カ月が過ぎた。5回の会合で、自殺の原因は得られず、調査を継続する。市教委は、別のアンケート結果と取り違え、一度はいじめは認められなかったとしたずさんな対応に、遺族は不信感を募らせている。毎日新聞の取材に応じた生徒の父親(42)は「娘がなぜ死ななければならなかったのか」と、真相究明を望む苦しい胸の内を語った。【長南里香】

 毎日新聞の情報公開請求で開示された事故報告書によると、生徒は今年2月12日午前7時50分ごろ、学校の昇降口前で倒れているのが見つかり、救急搬送先の病院で死亡が確認された。



 その日の衝撃を、父親は今も忘れることができない。警察官から、げた箱に「死ね・キモイ」と書かれた紙を入れられていたことを初めて聞き、自殺だったと告げられた、と涙ながら語った。学校ではバレーボール部に所属。「妹思いの優しい子だった」と、笑顔を見せていた在りし日の姿に思いをはせた。

 事故報告書では、2020年11月の生徒と担任との面談で、同年9月30日から10月15日までの合唱練習期間に、げた箱に紙が入っていたことを、生徒が訴えている。担任は「今度あったらすぐに言ってほしい」と伝え、「要観察」とした。学校側の対応について、父親は「連絡はなかった。適切に対処していたら、娘は死なずに済んだのではないか」と悔しがった。




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情報公開請求で開示された報告書。「死ね・キモイ」と書かれた紙を入れられたことが記されているが、多くはマスキングされていた

 愛娘の自殺から7カ月が過ぎた今年9月、父親は事故報告書の存在を知り、開示を請求した。20年11月、学校が実施した保護者アンケートで、母親は、無料通話アプリで悪口を言われていたことから、いじめの行為に当てはまると回答したにもかかわらず、報告書にその記載はなく、いじめ行為は認められなかった、と結論付けられていた。

 こうした行政側の対応に、父親は「根幹に関わることで、いじめの隠蔽(いんぺい)ではないのか」と不信感を募らせ、市に対し、自殺を明らかにする学校説明会と新たな全校アンケートの実施や、第三者委員会の設置を求めた。



 事故報告書に、母親が主張した内容が未記載だったことについて、鈴木和仁教育長は2日、市役所で毎日新聞の取材に応じ、いじめはないと答えた20年6月のアンケートと取り違えた「作業ミス」だったと説明したが、その経緯は「第三者委で調査中」と述べるにとどめた。

 第三者委は、これまでに非公開で5回実施されたが、「自殺といじめの因果関係を結論付けるには不十分」として、さらに調査を続けるとしている。