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2021年11月06日07時08分

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米ニューメキシコ州の油井ポンプ(AFP時事)




 【グラスゴー時事】石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は追加増産を見送った。原油高が生活必需品の値上がりに波及し、インフレによる景気回復の腰折れ懸念が強まる中、増産を要請していた日米などの石油消費国との溝が鮮明となった。
 「今年10〜12月期には供給が需要に追い付き、在庫が積み上がるだろう」。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は4日の記者会見で、石油の需給バランスの図表を示しながら見送りの妥当性を説明。「二つの選択肢がある。責任感の強いわれわれの解決策か、政治的な解決策を取るかだ」と述べ、消費国の要請を一蹴した。
 産油国が懸念するのは来年以降に供給がだぶつき、価格が下がることだ。OPECプラスの産油量が毎月日量40万バレルずつ増えることに加え、それ以外の産油国でも供給が持ち直す見通し。英調査会社キャピタル・エコノミクスは「来年末には1バレル=60ドル前後に下落するだろう」と、今の水準から2割超落ち込むと予想する。
 これに対し、米ホワイトハウスの報道担当者はロイター通信などで「世界中が景気回復の正念場を迎えている時に、OPECプラスは持つ力を使う意思がないようだ」と決定を批判。別の報道担当者は「あらゆる手段を検討する」と述べ、石油戦略備蓄の一部放出などを示唆した。
 日米欧などの先進国はジレンマも抱える。英北部グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、産油国にも化石燃料からの脱却を求めているためだ。ケリー米大統領特使は「矛盾ではない」と反論。「5年後ではなく、今この瞬間の増産を求めているのだ」と強調した。ただ気候変動に関する議論の真っ最中に、化石燃料への依存度の高さを改めて印象付ける皮肉な結果となっている。