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毎日新聞 2021/11/6 16:47(最終更新 11/6 17:39) 有料記事 2022文字




 ある日突然、家族が性犯罪に手を染めたら――。参加者は日常が一変した体験をぽつりぽつりと語り始めた。福岡県内で定期的に開かれている性の問題に特化した当事者の家族の会合。打ち明けられていく本音には、事件後に孤立を深めていく家族の苦悩がにじみ出ていた。再犯防止に欠かせない家族をどう支援するのか。全国的に珍しい取り組みの現場を取材した。

 「一緒に暮らしているのに全く気づけなかった」。40代の女性が話し始めた。数年前、女子児童への強制わいせつ容疑で高校生だった長男が逮捕された。「息子さんはいますか」。早朝にスーツ姿の警察官4〜5人が訪ねてきた日の記憶は今も鮮明だ。長男に非行歴はなく、思い当たる節がなかった。任意同行を求められた長男は家を出て、その後、逮捕された。

 10月上旬、性にまつわる犯罪や問題行動を繰り返す当事者の自助グループ「SCA福岡」の家族会が福岡市内であった。主催者の許可を得て記者も同席した中での「告白」。女性の生活はその後、暗転する。

 インターネットに事件のニュースが流れた。容疑者の長男は少年で匿名だったが、近所に知られないか不安で仕方なかった。警察署での長男との面会、弁護士の選任、被害者への謝罪や賠償と対応に追われた。人目を避けて外出し、知人には口を閉ざした。高校は自主退学の手続きを取った。

 少年審判の結果は試験観察で、少年鑑別所から長男は戻ってきた。…

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