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2021年11月23日07時06分




 国と地方の基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化させる政府の財政健全化目標について、見直しの圧力が高まっている。政府は同目標を財政規律の一つとして掲げてきたが、岸田文雄政権は19日に財政支出55.7兆円と過去最大の経済対策を取りまとめた。来年夏に参院選も控え、与党からさらなる歳出拡大を求める声が強まりそうだ。
 PBは政策的経費を借金に頼らず、税収でどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府の今年7月の試算によると、名目3%超の高い経済成長を前提にしても黒字化は27年度となる。加えて、今回の経済対策に伴う赤字国債発行で財政は悪化。目標実現はさらに遠のく見通しだ。
 自民党はこのほど、高市早苗政調会長の直轄機関として「財政政策検討本部」の新設を決め、党内きっての積極財政派である西田昌司参院議員を本部長に起用。西田氏は19日に自身の動画投稿サイト「ユーチューブ」を更新し、「財政出動を税収の範囲だけで行うのは間違いだ」とPB黒字化を目指すことに疑問を呈した。
 また、政府は先週、22年度予算編成の基本方針案を取りまとめようとした。しかし、歳出改革を重視する文言が含まれていたことなどで自民から反対論が噴出。同方針案は練り直しを迫られている。
 政府は現在、25年度の黒字化目標を堅持する姿勢だ。ただ、岸田首相は19日のインタビューで、目標について「再確認と検証を行っていく」と見直しを否定しなかった。首相の懐刀とされる木原誠二官房副長官は20日のBSテレ東の番組で、「かたくなに堅持しなくてはいけないとも、今すぐ(旗を)降ろさなくてはいけないとも思わない」と語り、経済情勢を見極める姿勢を見せた。
 政府は今年度中に新型コロナウイルス禍の経済・財政への影響を検証する予定。その過程で財政健全化目標についての議論も進みそうだ。