https://mainichi.jp/articles/20211118/k00/00m/040/235000c

毎日新聞 2021/11/23 11:00(最終更新 11/23 12:08) 有料記事 3203文字




 国語・現代文でネット中傷の問題に迫る開成中の授業。連載第1回で紹介した1、2回目の授業では、まずは「他人事」にしない感覚と、中傷を加速させる装置としてのネットの特性を考えた。今回は、「人間の側の問題」に引きつけた3回目の授業を報告したい。人間の欲求やアイデンティティー、モラトリアム……先生からは哲学的な言葉がボールのようにポンポンと飛び出した。必死に打ち返す生徒たちに、伝えたメッセージとは――。(次回は26日)【宇多川はるか/デジタル報道センター】

手軽な加害、一方で被害は…
 9月29日朝。「気をつけ、礼!」。チャイムが鳴って3回目の授業が始まり、まず神田邦彦先生(58)が投げかけた。「なぜネット上の誹謗(ひぼう)中傷が心に刺さるのか? なんでだと思う?」

 「匿名だから、誰がやっているか分からない」

 「大量になる」

 「相手の目的が分からない」

 「自分への誹謗中傷が読めるスマホを常に持ち歩いている」

 生徒たちは思考を巡らせ、思い思いに発言する。神田先生はその一つ一つに相づちを打ちながら、教室前方のスクリーンに「手軽な加害と深刻な被害」という言葉を映し出した。「人を殴るのって手軽じゃないよね。でも、ネット中傷は手軽な一方で、被害は深刻。この落差たるや大変なことなんだ」

 ここで今回の授業のテーマが改めて画面に映し出された。「人間の側の問題」。道具だけではなく人間の方に、安易にネット上に誹謗中傷を書き込んでしまいかねない要素はないか、という問いかけだ。

人間の欲求から考える―3回目
 「三大欲求って知ってる?」。神田先生が唐突に聞く。

 「食欲」「睡眠欲」

 すぐに生徒たちが答えた後、「性欲」という声も上がり、少し笑いが起きた。まだ出てくる。

 「物欲」「支配欲」

 「承認欲求」という言葉まで上がった。

 「食欲、睡眠欲、性欲は本能的な欲求、つまり一次的な欲求だ。そのほかの物欲とか支配欲、承認欲求は二次的欲求って言うの」。神田先生は生徒から出た欲求に関する言葉を整理しながら、「ここで一つ聞きたいのだけど」と問いかけた。「他者とのコミュニケーションをとりたい欲求は(一次的欲求、二次的欲求で分類すると)どのあたりになる?」

 「全部に関わる」



この記事は有料記事です。
残り2280文字(全文3203文字)