https://www.sankei.com/article/20211125-WATYFTBVJRO4HIVW3GYV7ZZQNY/
2021/11/25 07:00


ソウルに住む日本人の知人に誘われ、栄養価が高いことで知られる犬肉の専門店を訪ねた。数人に同行を断られ、私に声をかけたという。地方の飼育場でペットのイメージとは全く違う大型の食用犬を目にした経験もあり、さほど抵抗はなかった。

新型コロナウイルスの防疫規制の緩和でにぎわう他の飲食店とは異なり、店内は閑散としていた。メニューは、辛い味付けの鍋料理「補身湯(ポシンタン)」とゆで肉。プルプルとした食感が特徴で、淡泊で臭みもないが、特段のうま味もない。やや拍子抜けした。

韓国の食文化として定着している犬食は近年絶滅≠フ危機に瀕(ひん)している。2018年の平昌(ピョンチャン)五輪と前後して、動物保護団体の圧力や需要の低迷に伴い養犬場や専門飲食店が次々と閉鎖に追い込まれた。愛犬家の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今年9月、「犬肉の消費禁止を慎重に検討するときが来たのではないか」と発言した。

日本の鯨肉と同様、地域に根付く食習慣を維持するか否かは住民が決めることで、外から意見する話ではないと考えている。ただ、周囲の韓国人に聞くと「子供のころ、親戚にだまされて食べさせられた」「会食で上司に無理やり店に連れていかれた」など、犬肉の評判は散々。このまま、ひっそりと姿を消していくのだろうか。(時吉達也)