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毎日新聞 2021/11/26 20:34(最終更新 11/26 20:34) 1025文字




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新しい資本主義実現会議であいさつする岸田首相(右から2人目)=首相官邸で26日午後

 岸田文雄首相は26日、経済3団体と連合のトップらが顔をそろえた政府の「新しい資本主義実現会議」で、「3%を超える賃上げを期待する」と述べた。新型コロナウイルス禍で企業の業績が二極化していることを踏まえ、産業全体の一律賃上げは求めなかったものの、実質的には安倍晋三政権時代から続く政府主導の賃上げ路線を継承した。

 春闘を巡っては、安倍政権が2014年春闘から経済界への賃上げ要請を始めた。賃上げ、消費拡大、企業業績拡大、新たな賃上げという「経済の好循環」を実現するためだった。18年春闘では、安倍首相(当時)が「3%」という具体的な数値で賃上げ目標を初めて示し、圧力を強めた。



 厚生労働省の調査によると、この間、民間主要企業の賃上げ率は15年の2・38%がピークで、18年以降は低下が続き、直近の21年は1・86%で8年ぶりに2%を割り込んだ。こうした現状を踏まえ、岸田首相は26日の会議で、赤字でも賃上げした中小企業への補助率を引き上げる特別枠の設置▽3年間で4000億円規模の施策パッケージを新たにつくり、非正規雇用も含めた職業訓練などを支援――などに触れ、民間企業の賃上げをバックアップする考えを示した。

 首相発言を受け、経済界の反応はさまざまだ。会議に出席した経団連の十倉雅和会長は終了後、「一方的な要請ではなく、それぞれの役割を果たしていこうということだったと理解している」と指摘。首相が示した「3%超」という数字については「我々はそういう数字を設けずに、個社の賃金決定の大原則がある」と語った。連合の芳野友子会長は「コロナ禍で業界内でさまざまな状況の違いがある。非常に厳しい業界でも、将来を見据えた賃金改定をしてほしい」と語った。



 経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「3(%)にいかなかったらダメとか3(%)を超したら勝ちとかになったら『官製春闘』になってしまう。そういうのは絶対にやめてくれと言った」と語った。

 日本商工会議所によると、企業が生み出した付加価値に対する人件費の割合を示す「労働分配率」は直近の数字で、大企業の45%に対し、中小企業は72%、小規模事業者では86%と高止まりしている。同商工会議所の三村明夫会頭は「我々は分配のための原資がこれ以上ない。中小企業にとっては(数値が)大きすぎちゃって到達は不可能」と言い、「各企業が置かれている状況を反映しながらどう協力していくかだ」と話した。【後藤豪、山口敦雄、李舜、中村紬葵】