https://www.sankei.com/article/20211127-EJ77KGHNCRKOTDJT2VHSFDSJOA/
2021/11/27 20:24


新型コロナウイルスの感染再拡大に備え、国産治療薬の開発が急がれる中、東京都が11月から、複数の製薬会社が進める臨床試験(治験)への協力を開始したことが27日、分かった。都内の宿泊療養施設で希望する患者に対し、抗寄生虫薬「イベルメクチン」などの投与を始めた。経口治療薬は新型コロナへの「真の『切り札』」(都幹部)とされ、都は治験の場を提供することで、データの収集を側面から支援する。

都によると、今月1日以降、複数の製薬会社が都内の宿泊療養施設で新型コロナの軽症者に対する治験を開始。「興和」が治験を進めるイベルメクチンについては宿泊療養施設での1例目として今月中旬、患者本人の意思を確認した上で投与したという。

都はこれまでに治験に応じた患者の数など詳細は明らかにしていない。軽症者は、厚生労働省に特例承認されている「抗体カクテル療法」の投与も選択できるため、承認されていない治療薬の治験に対し、どれくらいの患者が協力するかは未知数だ。

各製薬会社は早期の承認申請を目指すが、今夏の流行「第5波」が収束してからは感染者数が低い水準で推移しており、治験データの収集に時間を要することも想定される。都幹部は「治療薬が市場に出れば、国民の安心につながる。少しでも早く承認されるよう都としてできることをしたい」と治験協力の意義を強調する。

治療薬は興和のほか、中外製薬や塩野義製薬などが開発を急いでいる。既存薬を転用する場合は、副作用など安全性に関する長年のデータの蓄積があるため、開発期間の短縮だけでなく、早期の市場投入も期待される。