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2021/11/27 21:17


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香港立法会(議会)に掲揚される、中国国旗(右)と香港の旗(AP)

世界貿易機関(WTO)のもと一部加盟国・地域でつくる「政府調達委員会」で、台湾の議長への選出を香港が阻止し、議長不在が続いていることが27日、分かった。日米欧など圧倒的多数が台湾選出を支持したが、香港の反対で全会一致方式の選出手続きが停止。同委の機能不全が懸念されている。反対の背景に台湾と対立する中国の意向があるとみられており、同委の参加国から「極めて不適切だ」(米国)などと反発する声が出ている。

政府調達委はWTO傘下で、貿易ルールの分野ごとに加盟国・地域が協議するため設置された合議機関のひとつ。政府機関による物品やサービスの調達ルールを定めた協定の21の加盟国・地域が加わっている。

WTO関係者や同委の議事録などによると、今年7月の議長交代に伴う後任選定を今年1月に開始。台湾と欧州連合(EU)が出馬したが、台湾への支持が圧倒的多数となったため、EUの候補が撤退した。

だが、香港が台湾選出に反対。WTOが全会一致を合議の原則とするため、議長を選任できなくなった。

7月下旬に上部機関の一般理事会で討議され、各国が香港に翻意を促したが、香港は「委員会の多様な事業や(同委への)新規加盟作業の助けにならない」と主張し、反対を貫いた。台湾は「明確な理由になっておらず、全会一致原則の悪用だ」と反論している。

同委には中国が新規加盟を目指しており、台湾が議長となれば不利に働く恐れがあるとして、香港が中国に代わって台湾の選出阻止を図る「代理戦争をしている」(WTO関係者)との見方が出ている。

今夏以降も関連会合が開かれてきたが、台湾当局関係者は産経新聞の取材に対し、事態打開に至っていないことを認めた。

香港はWTOの前身である「関税および貿易に関する一般協定」(GATT)に1986年に加盟。中国の2001年のWTO加入後も、独立したメンバーの地位を維持している。

国際機関への台湾の参加をめぐっては、世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加に中国が反対し、台湾が5年連続で参加できなくなっている。

世界第2の経済大国となった中国がWTOで「発展途上国」とされ、優遇的な扱いを受ける現状を問題視する見方は根強い。米国内には、香港国家安全維持法(国安法)施行後、「一国二制度」を前提に貿易・金融上の特別な地位を香港に認めてきたことを見直すべきだとの声もある。

今回のWTOでの議長選任問題は、こうした国際社会から向けられる現行制度への不信を、一段と深める契機となる可能性がある。

(ワシントン 塩原永久)