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2021年11月28日07時10分

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アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国のムハンマド皇太子(左)とトルコのエルドアン大統領=24日、アンカラ(AFP時事)




 【イスタンブール時事】トルコがアラブ首長国連邦(UAE)との事実上の首脳会談を機に、近年緊張関係にあった湾岸諸国との関係改善に本格的に乗り出した。トルコと湾岸諸国は、いずれも民主主義の価値観を重視するバイデン米政権との関係が微妙で、中東地域での「米国抜き」の秩序形成が加速する可能性もある。


 UAEで国政の実権を握るアブダビ首長国のムハンマド皇太子は24日、トルコを約10年ぶりに訪れ、エルドアン大統領と会談した。会談後、UAEはエネルギー分野などでの対トルコ投資拡大を念頭に、100億ドル(約1兆1500億円)規模のファンド設立を表明。通貨リラ急落で苦境に直面するトルコを支える姿勢を鮮明にした。
 トルコ大統領府高官は皇太子訪問について「地域の安定につながるトルコと湾岸諸国の新たな時代だと信じている」と高く評価してみせた。在米トルコ系アナリスト、ソネル・チャアプタイ氏は「UAEの支援を受け、トルコには借りができた」と指摘。トルコがこれまで良好な関係を築いていたパレスチナのイスラム組織ハマスなど、中東各国・地域のイスラム組織「ムスリム同胞団」系勢力への支援を今後控えていくという見通しを示した。
 トルコは従来、盟友関係にあるカタールと共に、各国を追われた同胞団員をかくまうなどし、UAEや湾岸諸国の盟主サウジアラビアの反発を招いていた。
 接近の背景には共に外交上での対米依存を減らし、多角化を進めているという事情がある。米国は12月9、10両日に予定する「民主主義サミット」で約110の国・地域を招待する一方、中東ではイスラエルとイラクのみに声を掛け、トルコと湾岸諸国は除外された。
 一方、同様にサミットから外された中国やロシアは最近、軍事面から新型コロナウイルスのワクチン供与に至るまで、多方面でトルコや湾岸諸国への関与を強化している。一連の動きは、今後の中東情勢の推移に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。