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2021年11月28日20時35分

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国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(左)とイランのアブドラヒアン外相=23日、テヘラン(EPA時事)

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ブリンケン米国務長官=22日、ワシントン(AFP時事)




 【ワシントン、カイロ時事】イラン核合意再建に向けた交渉が29日、ウィーンで約5カ月ぶりに再開される。8月に発足した保守強硬派のイラン新政権は、国際原子力機関(IAEA)の査察制限を続けるなど交渉に真剣に臨むかどうか不透明だ。米国は交渉以外の「他の選択肢」に言及し、けん制する。米欧では交渉の行方に悲観的なムードが漂っている。


 バイデン米政権は、トランプ前大統領が2018年に離脱した核合意への復帰を目指し、欧州の仲介によるイランとの間接交渉を当面続ける意向。イランが合意を順守すれば、再発動した核関連の制裁を解除する方針だ。ただ「(交渉の)残り時間が少なくなりつつある」(ブリンケン国務長官)と強調。4月に始まった交渉の長期化を避けたい考えだ。
 15年の核合意は、イランが核兵器開発に必要な高濃縮ウラン製造に1年かかるように制限した。だがイランは核合意を逸脱し、濃縮度60%の濃縮ウラン製造など能力を高め続けている。米国は、このままでは核合意が再建されても、1年の制限が無効になりかねないと危惧している。
 シンクタンク「国際危機グループ」のイラン専門家アリ・バエズ氏は「来春までに再建できなければ、(イランの核開発を抑止する)核合意の価値は消える」と指摘する。
 ブリンケン氏は、交渉が失敗すれば「他の選択肢」を追求すると明言。米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、対イラン追加制裁や、イランが核関連活動の一部を凍結する代わりに制裁の一部を解除する「暫定合意」の検討も行われているという。
 一方、イランは交渉再開を前に、すべての制裁解除や、米国が再び核合意を離脱しないことの保証など受け入れ困難な要求を米側に突き付ける。イラン外務省によると、アブドラヒアン外相は26日、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)との電話協議で米欧に「新たな建設的なアプローチで交渉の席に着くべきだ」と訴えた。
 アブドラヒアン氏は「他方(米国)が合意の完全履行と制裁解除の用意があるなら、良好で即時の合意に達することは可能だ」と主張する。だが、最終決定権を握る最高指導者ハメネイ師の対欧米不信感は深く、譲歩する余地は乏しいのが実情だ。国際社会との溝が埋まらぬまま、イランが核開発を加速する悪循環が続いている。