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毎日新聞 2021/11/29 18:18(最終更新 11/29 18:32) 有料記事 2062文字




 先の衆院選では、神奈川13区の甘利明・自民党前幹事長をはじめ小選挙区で落選しても重複立候補した比例代表で「復活当選」した与野党の重鎮が多かった。敗れたはずの候補が議席を獲得する様子はインターネット上で「ゾンビ」と揶揄(やゆ)されることもある。原因となっている比例代表制には神奈川県内の政界関係者からも「有権者の意思を無視している」「力のない議員が増えた」と批判の声が上がる。小選挙区比例代表並立制が初めて導入された1996年の衆院選から四半世紀。衆院選の取材を通じて、その弊害が見えてきた。

「弱い選挙区は弱いまま」
 「甘利さんにとっては比例復活さまさま」。13区で立憲民主党の新人、太栄志氏に約5500票差で敗れ、比例復活した甘利氏を20年以上支援してきた大和市の男性は、率直に制度への感謝を口にする。一方、太氏に投票した座間市の60代男性は「(甘利氏は)地元の大先生だけど(金銭問題など)いろいろグレーな部分が取り沙汰された。地元で1人選ぶ選挙なのに、復活するのがよくわからない」と疑問を呈する。

 比例代表の恩恵を受けたのは与党だけではない。立憲民主党の青柳陽一郎・前県連幹事長は6区で自民新人に敗れたが復活当選した。こうした当選者をSNS(ネット交流サービス)上では「ゾンビ議員」と揶揄する声もある。ただ、比例代表は小選挙区で増加傾向のある死票を議席に反映させる仕組みにもなっている。

 今回の衆院選で、県内の小選挙区の全体有効票は423万1048票で、落選者への投票数は201万3867票。比例代表での復活がなければ、有効票の48%が死票になっている計算だ。

 「弱い選挙区は弱いまま」。8区で自民候補の選対本部長を務め、横浜市議長の経験もある横山正人市議(57)は、比例代表の弊害をそう説明する。「小選挙区の候補者を差し替える仕組みがないと活性化しない。党の弱体化につながる」という。

 自民党は小選挙区で連敗すると重複立候補を原則認めないとする内規があるが、形骸化している。…

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