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2021/12/1 05:00


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厚生労働省は、わいせつ行為で登録が取り消された保育士について、刑の執行後に最大10年間は再登録できないよう厳格化する

幼児期におけるわいせつ行為の被害は心に深い傷を負う。わが身に起きていることを、うまく周囲に説明することができない幼児を確実に守る環境をつくることは、大人の当然の責務である。

厚生労働省は、わいせつ行為で登録が取り消された保育士について、刑の執行後に最大10年間は再登録できないよう厳格化する、児童福祉法の改正案を来年の通常国会に提出する方針だ。

学校現場では5月、「教員等による児童生徒性暴力等防止法」が成立し、わいせつ教員の免許再取得が厳格化された。

今回の法改正は、これと足並みをそろえるものだ。

保育士は養成校を卒業したり、都道府県の保育士試験に合格したりすることで資格を取得し、都道府県の登録を受ける。

禁錮以上の刑や、児童買春・児童ポルノ禁止法など児童福祉に関連する法律で罰金刑が確定すると登録が取り消される。平成15〜令和2年にわいせつ行為で登録を取り消された保育士は男性61人、女性3人の計64人に上る。

だが現行制度では、刑の執行終了から2年がたつと、再登録が可能になる。改正案では再登録できない期間を罰金刑で3年、禁錮刑以上で10年とする。刑の言い渡しが10年で効力を失うとする刑法の規定に拘束された。

厳格化に向けて一歩前進ではあるが、10年たてば安心できるというものではない。特に小児性愛に関する犯罪は再犯率が高いとされる。このため、都道府県の審査会などで再登録の可否を判断し、拒否できるようにする。

肝要なのは、ここで都道府県による判断のばらつきを出さないことだ。再登録の拒否には、憲法上の「職業選択の自由」に反するなどの慎重論がある。ただし憲法は自由の範囲を「公共の福祉に反しない限り」と定めている。審査会にはわいせつ保育士の現場復帰を許さぬ厳格運用が求められる。

また、登録を取り消されたわいせつ保育士の情報を、都道府県が共有する仕組みの構築も急務である。国が情報を一元化し、データベースを作ることなどが検討されており、徹底してほしい。

わが子を、わいせつ保育士に預けたいと思うか。知らぬ間に現場に復帰している事態を許せるか。被害が繰り返される前に、これを防ぐ態勢を強化すべきである。