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2021/12/7 21:33


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財政健全化推進本部役員会で発言する岸田文雄首相=7日午前、東京・永田町の自民党本部(矢島康弘撮影)

政府の財政運営をめぐり、自民党内で財政規律派と積極財政派によるつばぜり合いが熱を帯び始めた。岸田文雄首相(党総裁)と高市早苗政調会長それぞれの直轄組織が7日、党本部で会合を開き、政府への提言に向けた議論を開始した。財政政策を扱う組織が党内に並立するのは異例で、政局の火種となる可能性もある。

「足元の新型コロナウイルス対策と中長期的な財政健全化は矛盾しない」

首相は7日、国の財政の在り方を議論する党の新組織「財政健全化推進本部」(本部長・額賀福志郎元財務相)の役員会でこう指摘した。令和7年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を目指す政府目標についても「議論を深めてほしい」と要請した。

健全化推進本部は党政務調査会にあった「財政再建推進本部」を、首相の意向で総裁直轄機関に改組して発足。最高顧問に前財務相の麻生太郎副総裁が就き、役員には宮沢洋一税調会長や小渕優子組織運動本部長らが名を連ねる。

一方、政調会長直轄の「財政政策検討本部」も7日に党本部で会合を開き、積極財政派と財政規律派双方の識者から国債発行をめぐりヒアリングを行った。来年5月をめどに提言をまとめ、政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」や参院選の党公約への反映を目指す。

政策検討本部は安倍晋三元首相を最高顧問に迎え、高市氏や古屋圭司政調会長代行ら積極財政派が役員に就任した。党内きっての積極財政派の西田昌司参院議員が本部長を務めるだけに方向性は明確だ。

健全化推進本部の新設について財務省関係者は「総裁直轄機関にしたのは財政規律派が正規軍というメッセージだ」と首相の意向を「代弁」する。一方で政策検討本部幹部は「こちらを警戒する一部の財政規律派は高市氏の発言力を警戒している」との見方を示す。

7日の健全化推進本部のあいさつでは麻生氏が、国債の無制限発行を可能とする現代貨幣理論(MMT)に触れ、「これに西田氏(の頭文字)をくっつけて『NMMT』という意見もあるやに聞いている」と述べた。デフレ脱却にMMT活用を提唱する西田氏が中心となる政策検討本部を牽制(けんせい)した形だ。2つの党組織の活動は、財政政策をめぐる首相と高市氏の主導権争いの様相も帯びている。(広池慶一)