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毎日新聞 2021/12/19 19:20(最終更新 12/19 19:21) 598文字




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放火事件があったクリニック=大阪市北区で2021年12月17日午後0時11分、山崎一輝撮影

 大阪市北区の雑居ビルの心療内科クリニックで男女24人が死亡した放火殺人事件で、大阪府警は19日未明、患者だった谷本盛雄容疑者(61)=住所・職業ともに不詳=が事件に関与した疑いがあると断定し、氏名を発表した。逮捕状の請求前に容疑者名を公表するのは極めて異例。

 警察が逮捕状請求前に容疑者名を公表したケースとしては、36人が死亡した「京都アニメーション」放火殺人事件(2019年7月)がある。



 この事件では、容疑者は重いやけどを負って入院していた。一方、事件直後に現場近くで身柄を確保され、警察の調べに「自分が火を放った」と認めていた。当時、記者会見して氏名を明らかにした京都府警は「身柄を確保したが治療を優先したことと、事件の重大性に鑑みて公表した」と説明していた。

 警察が容疑者の実名を公表するのは逮捕後が一般的だ。逮捕状が出る前に公表するのは、拳銃を持って逃走中の容疑者など、一般に危害を与える危険性が高い場合などに限られている。



 大阪府警による容疑者名公表について、園田寿・甲南大名誉教授(刑法)は「近年は処罰感情が高まっており、世論の勢いに流されて公表したのではないか。実名を出すことが一種の制裁になってしまっている」と指摘する。容疑者は現場クリニックの患者とされており、「精神障害を持つ人たちへの差別を助長する可能性があり、公表については慎重に考えるべきだった」と語った。【矢追健介】