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2021/12/21 17:43


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日本医師会の中川俊男会長

医療機関にサービスの対価として支払う令和4年度診療報酬改定をめぐり、鈴木俊一財務相と後藤茂之厚生労働相による閣僚折衝が22日に行われる。医師らの技術料や人件費にあたる「本体部分」の改定率を0・43%引き上げることで合意する見通し。改定率は近年の水準以下で、日本医師会(日医)にとっては「敗北」に近い結果となった。

本体の改定率をめぐっては、膨張する医療費を抑制したい財務省と、新型コロナウイルス禍に伴う受診控えによる経営悪化を理由に大幅なプラス改定を求める日医との間で攻防が繰り広げられた。

関係者によると、財務省は0・32%増、日医と連携している厚労省は0・48%増を主張し、岸田文雄首相は、やや日医・厚労省寄りの0・43%を決断した形となっている。横倉義武前会長時代の過去4回の平均値0・42%(消費増税対応分を除く)も取り沙汰され、これをわずかに上回ることで、日医の顔を立てたともいえる。

だが、0・42%は財務省が自民党厚労族や日医を説得させるための「見せ球」との見方は強い。横倉氏は前回(令和2年度)、前々回(平成30年度)と0・55%を勝ち取っており、消費税対応分を含めると平均値は0・58%に跳ね上がる。

さらに中身を見ると、プラス要因として「特殊要因」といわれる首相肝いりの看護師らの処遇改善分に0・2%、菅義偉前首相が進めた不妊治療の保険適用分に0・2%。処方箋を一定期間繰り返し使える「リフィル処方箋」制度の導入でマイナス0・1%、小児科医療の見直しでもマイナス0・1%とした。

0・43%から差し引き、実質0・23%となり、日医幹部からは「非常に厳しい結果だ」との声が漏れる。しかも、リフィル制度は患者にとっては通院の負担が減るが、医師にとっては減収につながるため、日医が長年反対してきた代物だ。

こうした結果になったのは、コロナ禍で苦しい生活を強いられている人が多い中、診療報酬を大幅に引き上げることで生じる、国民負担の増加を抑制したいと首相が考えたからだ。

昨年6月の日医会長選で現職の横倉義武氏が敗れ、中川俊男氏に代わったことも大きい。横倉氏は当時の安倍晋三首相と昵懇(じっこん)な間柄にあり、当時財務相だった麻生太郎自民党副総裁とは同じ福岡県出身で、太いパイプでつながっていた。

中川氏は政界とのパイプが細く、政府のコロナ対策に批判的な発言も目立った。麻生氏はいまだに財務省に強い影響力があり、日医会長選のしこりが影響したとの見方も強い。

(坂井広志)