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毎日新聞 2021/12/22 09:09(最終更新 12/22 09:09) 846文字




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住民投票条例案を否決した武蔵野市議会。挙手は賛成した市議=同市で、後藤由耶撮影

 東京都武蔵野市議会本会議で21日、日本人と外国人が同条件で参加できる住民投票条例案が否決された。全国的な関心を集めた議論の結末を見届けようと、本会議場には多くの市民が足を運んだ。松下玲子市長は条例案を再提案する意向を示した。【李英浩、南茂芽育】

 条例案は立憲民主党や共産党系会派が賛成する一方、自民・公明党系会派が反対の立場を表明してきた。13日の市議会総務委員会は採決で賛否同数になり、委員長裁決で可決されるなど、それぞれの勢力が拮抗(きっこう)し、これまで賛否を明らかにしていなかった議員らの判断が注目されていた。



 市役所ではこの日、午前10時の開会前から議場の入り口に列をなした市民らが開場とともに傍聴席を埋め尽くしていき、国内外の報道関係者が駆けつけて議論の行方を見守った。

 条例案に反対した市議らは本会議で市民に対する制度案の周知不足を指摘。市議会公明党の落合勝利市議は「条例制定に向けた市の努力は評価するが、市民の理解がどれだけ深まったかという点では不十分と言わざるを得ない」と訴えた。



 一方、賛否を明確にしていなかった会派「ワクワクはたらく」の本多夏帆市議は、国籍要件にばかり注目が集まった点を挙げ、「本来すべきは制度設計全体の議論だが、現段階ではできていないに等しい」として反対を表明した。

 賛成した共産党市議団の橋本繁樹市議は、条例案を外国人参政権と関連づけて説明した国会議員の発信などを例に「市民をミスリードすることはやめるべきだ」と述べた。


「市民全体で議論を」
 市民権や国籍の問題に詳しい南山大の菅原真教授(憲法学)は、「争点となった国籍の問題と手続き論について、対案はまとまっていないが、今後市民全体で議論されることが大切だ」と指摘。反対世論が広がる過程で外国人の排斥を訴える主張が繰り返されたことについて、「否決という結果が彼らの勝利と受け止められ、排外的な動きが強化される不安はある。同様の議論に圧力がかかるなど、他自治体への波及効果も危惧される」と語った。