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毎日新聞 2021/12/22 16:58(最終更新 12/22 17:23) 1103文字




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すべての外国人の新規入国を原則禁止する措置が始まり、閑散とする国際線の到着ロビー周辺=成田空港で2021年11月30日午前9時58分、小川昌宏撮影

 世界で急速に感染が拡大する新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」を警戒し、野党各党が、海外からの入国・帰国者の空港検疫で抗原検査から、より精度の高いPCR検査への変更を相次いで要求している。水際対策を強化する狙いだが、政府は抗原検査が「最適」(岸田文雄首相)として継続する方針だ。

 立憲民主党の長妻昭元厚生労働相らは21日、後藤茂之厚労相あてに「徹底した水際対策のため空港検疫でPCR検査を行うこと」など10項目を要請した。滞在した国・地域によって隔離施設の待機期間を0〜10日間に指定する現在の対応から、「全入国者を10日間待機」に改めるよう求めた。



 共産党の小池晃書記局長は17日の参院予算委員会で、空港検疫のすり抜けの可能性について指摘。後藤厚労相は6〜12日に入国した感染者89人のうち、約3割の29人が入国3日以降の検査で陽性が判明したと答弁した。

 小池氏は「空港検疫の『すり抜け』を防いで国内の市中感染を遅らせるのが政府の責任だ。少しでも感度の高い検査に当然変えるべきだ」とPCR検査への変更を求めた。しかし、岸田首相は「技術開発ができたらPCR導入も検討すべきだが、現状で最も大量に迅速に検査する要請に応えられるのは今行っている方法(抗原検査)だ」と反論した。



 オミクロン株は感染性が高く、既存のワクチン効果が低下する点が懸念される。国内では外国から入国した人のほか、関西空港の検疫所職員や沖縄県の米軍基地の従業員の感染が確認された。野党が特に警戒しているのは、東京都内の男性が帰国した女性からオミクロン株に感染し、サッカーを観戦していた件だ。

 米国から8日に帰国した20代女性は成田空港到着後、空港検疫で陰性となり、当日に都内の自宅に帰った。自宅で知人の男性と会った後、発熱。2人とも結果的にオミクロン株感染が確認されたが、男性は感染判明前の12日、約1万7000人が入場したサッカー天皇杯準決勝を観戦していた。



 20日に開かれた立憲の新型コロナウイルス対策本部では「空港検疫がPCR検査だったら陽性が判明していたのではないか」「抜本的に水際対策を変えないと大変なことになる」などの不満が噴出した。

 厚労省の担当者によると、抗原検査の陽性判明はPCRの91・4%。それでも、待機時間を短縮できるのが大きなメリットで、PCRは1回に約100人分を検査する仕組みだが、抗原検査は随時検査を開始できるという。空港内の待機時間が短いと、入国・帰国者同士の接触リスクを減らせるという。ただ、検体採取から結果判明までの時間は抗原検査が約1時間で、PCRの約1時間半と大差ないという。【田所柳子】