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2021年12月25日07時06分

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北京冬季五輪・パラリンピックに政府関係者を派遣しない方針について、記者団の質問を厳しい表情で聞く岸田文雄首相=24日午後、首相官邸




 政府が北京冬季五輪への対応で、政府関係者の派遣を見送る一方、東京五輪関係者らを送ることを決めたのは、中国の人権状況を厳しく非難するバイデン米政権と歩調を合わせつつ、中国のメンツにも配慮したためだ。日本としては板挟みに陥った末の「苦肉の策」とも言えるが、どっちつかずの印象も与え、岸田文雄首相が重視する人権重視の姿勢はぼやけた。
 首相は24日、記者団に対し、今回の判断について「自由、基本的人権の尊重、法の支配、こうした普遍的価値が中国でも保障されることが重要だ」と指摘しつつ、「五輪・パラリンピックは世界に勇気を与える平和・スポーツの祭典だ」と強調した。
 新疆ウイグル自治区での中国の対応を「虐殺」と非難し外交ボイコットを決めた米国に対し、中国は対抗措置を取ると反発。米中対立のはざまで米国から同調を迫られた形の日本政府は、中国を刺激しない「軟着陸」を模索した。
 閣僚ら政府関係者を派遣すれば、同盟国・同志国である米国、オーストラリアなどとの足並みの乱れが露呈する。一方、中国とも「建設的で安定的な関係」を目指す首相としては、事を荒立てる対応は避けたいとの思いが強かった。
 折衷案として、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長や、室伏広治スポーツ庁長官らスポーツ関係者の派遣を検討。室伏氏については政府の立場にあることから最終的に派遣を見送った。
 もっとも、首相は就任後、国際人権問題担当の首相補佐官を新設。23日の講演でも「私の政権では普遍的価値を守り抜くため、同盟国・同志国と連携し、しっかり声を上げていく」と語るなど、人権外交の旗を振ってきた。それだけに今回の対応は「看板倒れ」との指摘も出そうだ。
 外交ボイコットを首相に求めてきた自民党の安倍晋三元首相は、記者団に「普遍的価値を共有する同志国の戦列に加わったということだ」と政府の対応を評価し、首相を擁護した。一方、同党の保守系議員は「遅いし、歯切れが悪い。問題をできるだけ小さくしようとしている」と不満を口にした。