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毎日新聞 2021/12/25 15:53(最終更新 12/25 15:53) 1252文字




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ガス会社のショールームに並ぶ給湯器。製品には納期の遅れを伝えるビラが張られていた=福岡市博多区で2021年12月17日、河慧琳撮影

 本格的な冬の到来を迎える中、給湯器の品薄が続いている。新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、海外からの部品の供給が滞っているのが原因で、注文から商品が届くまで数カ月かかる場合もある。今や日常生活に欠かせない温水洗浄便座など他の工業製品も影響を受けており、専門家は今後しばらく混乱が続く可能性を指摘する。

 「お客さんから『何軒回っても給湯器が手に入らない』とか『お湯が出ずに銭湯に通っている』などと言われるが、今はどうしようもなく、我慢してもらうしかない」



 福岡県で水回り製品の修理をする「福岡水道センター」の蔦本(つたもと)幹夫さん(49)が声を落とす。同社では9月からガス給湯器が品薄になり10月は在庫でしのいだが、11月以降在庫も尽きた。現在も注文から納品まで1〜2カ月かかるため、予約だけ受け付けて工事を待ってもらっている状態だ。

 業界最大手のリンナイ(名古屋市)によると、品薄が続くのは、部品の工場があるベトナムで今年7月から新型コロナに伴うロックダウン(都市封鎖)が実施された影響で、給湯器の基板に用いるコイルの調達が困難になったのが理由だ。ロックダウンは解除され現在は生産ペースが向上しつつあるが、予約していた人を優先しているため、今から注文しても納品は2〜3カ月先になる見通しという。



 国内のガス給湯器はリンナイとノーリツ(神戸市)でシェアの約8割を占めるが、ノーリツも同様の理由で納品が遅れており、2社は9月以降、製品の納期の遅れに関するおわび文をホームページ上に掲載した。

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ガス会社のショールームに並ぶ給湯器。製品には納期の遅れを伝えるビラが張られていた=福岡市博多区で2021年12月17日、河慧琳撮影

 給湯器が入手しづらい状況が続く中、給湯器を扱う各社は利用者に対し故障防止対策を呼びかけている。西部ガス(福岡市)の担当者は「給湯器の中にも凍結を防ぐ機能はあるが、配管の中が凍って氷が給湯器に詰まると、内部の部品が破損する恐れもある。給湯器が屋外にある家などは凍結防止を心がけてほしい」とアドバイスする。



 日本貿易振興機構ホーチミン事務所の比良井慎司所長は「ベトナムには日本の製造業が多く進出しているが、ベトナムが『ゼロコロナ』を目指し7〜9月のロックダウンなど他国より厳しい措置を取ったことで影響が拡大した」と語る。

 ただ、新型コロナで部品の調達が困難になったのはベトナムからだけではない。TOTO(北九州市)は、7月ごろから温水洗浄便座の生産に影響が出ており、今も1〜2カ月以上納品が遅れている。当初はやはりベトナムのロックダウンが大きかったが、現在は世界的な部品不足が影響しているという。世界的な半導体不足も収束の兆しが見えない。



 神戸国際大の中村智彦教授(産業論)は「新型コロナで、ベトナムだけでなく日本企業が進出する他のアジア諸国で、港湾や空港の業務も含め影響が出ている。オミクロン株の出現などもあり先は見通せないが、混乱は2022年いっぱい続く可能性がある。コロナ後に各国が経済復興する過程で、物資が値上がりする可能性もあり、生活必需品が不足する事態は今後も起こりうる」と指摘する。【河慧琳、吉住遊】