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毎日新聞 2021/12/26 09:15(最終更新 12/26 09:15) 788文字




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群馬県伊勢崎市の臂泰雄市長(奥中央)と面談する高校2年の男子生徒(手前右)や河村正剛さん(奥右)ら=伊勢崎市役所で、大澤孝二撮影

 2010年のクリスマスに、プロレス漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」を名乗る人物から前橋市の群馬県中央児童相談所に贈られたランドセルを受け取った伊勢崎市の高校2年の男子生徒(17)が同市役所を訪れ、臂(ひじ)泰雄市長に児童養護施設や里親家庭から巣立つ人への支援を求めた。恵まれない子どもたちを匿名で支援する「タイガーマスク運動」はこの11年で全国に広がったが、当時6歳だった男子生徒はその恩恵を受けた第1号の一人だ。【大澤孝二】

 伊勢崎市役所には、16年に自身が最初の伊達直人であることを明かした前橋市在住の河村正剛さん(48)と男子生徒の里親の女性(45)、前橋市の山本龍市長が同行した。支援を求める男子生徒らの存在を知った河村さんが山本市長に相談し、訪問につながった。



 河村さんの活動に共感する前橋市は17年以降、高校を卒業して児童養護施設などを去る人に現金を支給したり、運転免許の取得費用を補助したりする事業に取り組んでいる。しかし、前橋市以外にこうした制度はなく、現在は伊勢崎市内で里親と暮らす男子生徒らが臂市長に制度の創設を要望した。

 男子生徒は「自分の時に制度化できなくても、同じように苦労している後輩のために支援を始めてもらいたい」と訴え、臂市長は「生活困窮世帯や外国人世帯などの支援を含め、早期に検討したい」と前向きな姿勢を示した。



 また、男子生徒が河村さんと対面したのは、今回が初めてだった。ランドセルをもらった時の感動は今でも忘れられないといい、「ランドセルには教材と夢が詰まっていた。将来は児相の職員になり、子どもの相談に乗りたい」と話した。

 河村さんは「自分が贈ったランドセルで学校に通った子どもがこんなに大きく成長してくれてうれしい。タイガーマスク運動は全国に広がったが、まだ点に過ぎない。線や面として確立するには行政の力が必要」と語った。