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毎日新聞 2021/12/30 10:10(最終更新 12/30 10:10) 1099文字




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臨時町議会で、自身の給与減額議案について説明する松本一彦町長(中央)=神奈川県真鶴町議会で2021年12月28日午前9時6分、本橋由紀撮影

 神奈川県真鶴町で、選挙人名簿抄本の不正コピー問題による混乱が続いている。コピー問題の当事者である松本一彦町長が出直し町長選で再選を果たしたが、騒動が収まる気配はない。町議会は町長自ら提出した給与減額議案を否決して全面対決の姿勢を見せ、「松本町長の下では働けない」と退職する職員もいる。町政が正常化するのはいつか、先行きが見通せない状況だ。【本橋由紀】

職員2人退職願
 「長年、町のために働いてきたのに、信用が水の泡だ」。町税務町民課の職員(62)は毎日新聞の取材に、悔しさをにじませながら言った。この職員はコピー問題以降、松本町長の記者会見での発言が二転三転したことなどに不信感を募らせた。「この町長の下では働けない」と町長選翌日の20日、退職願を出した。



 「43年働いてきたが、あんなコンプライアンス(法令順守)違反は町長と一緒にやったもう1人の職員だけ。職員の士気も下がり、町政も停滞している」と語気を強める。12月末に退職するが、松本町長から慰留されることはなかったという。

 もう1人、20日に退職願を出したベテラン職員がいる。こちらは3月末に退職する予定という。

議会は対決姿勢
 町関係者が反発を強めた背景には、松本町長が選挙期間中に「町の弱いところがわかった。私が当事者だから原因究明や再発防止をすることができる」と話していたことがある。ある職員は「自分たちだけが問題を起こしたのに、役場のコンプライアンスの問題にすりかえられている。冗談じゃない」と憤る。



 28日の臨時町議会でも議員から「法令順守しなかったのはあなたでは」という質問がぶつけられた。松本町長は「私と同じようなことを起こす環境を改めたい」と答弁し、不興を買った。給与を返上するという松本町長の公約に沿った給与減額議案に賛成した議員は、議長を除く9人のうち1人だけだった。

出初め式中止に
 不信感を強めたのは職員だけではない。町消防団は毎年1月に実施している出初め式を2022年はコロナ対策を講じて16日に行う予定だったが、松本町長が出席することに反発し、「極めて異例」(町職員)の中止が決まった。松本町長は取材に「仕方がないが、やれということもできず、受け入れるしかない」と力なく語った。



 周辺の自治体も距離を置いているようだ。町長選の翌日、箱根町にあいさつに行こうとして断られ、湯河原町は副町長が対応した。この点について、松本町長は「直接は聞いていなかったが、たぶん断られたのだろうと思った。反発も当然あるのだろう」と話す。

 町内外の協力を得られる日はいつになるのか。これからの町政運営はいばらの道になりそうだ。