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毎日新聞 2021/12/30 19:42(最終更新 12/30 19:42) 1129文字




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ロックダウン中の住宅に届けるため、野菜を詰めた袋を消毒する係員ら=中国陝西省西安市で25日、新華社AP

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けてロックダウン(都市封鎖)している中国陝西省西安市の感染者数が29日、今月に入り累計で1000人を超えた。厳格な行動制限と徹底した防疫措置でコロナを封じ込める「ゼロコロナ」政策を掲げる中国だが、足元では局地的な流行が続いている。中国当局が「原因不明の肺炎」としてコロナの流行を初めて公表してから31日で2年。北京冬季オリンピックを目前に控え、中国政府としても正念場を迎えている。

 陝西省の衛生当局の30日の発表によると、29日に西安市で新たに155人の感染を確認。感染者が出た9日からの累計は1117人になった。中国全体では27日、1日あたりの新規感染者が209人に上り、湖北省武漢市で感染が拡大した2020年3月以来最多となった。



 習近平指導部の号令の下、展開される「ゼロコロナ」政策では、感染者が一人でも出ると、その居住区を封鎖して全住民のPCR検査を実施するなど厳格な措置が取られる。またスマートフォンで、ワクチン接種の有無やPCR検査の陰性証明、感染地域への行動歴等を記録・管理するなど徹底した防疫措置が講じられている。

 感染が拡大した西安市では23日から住民ら約1300万人の外出を原則禁止にする都市封鎖を開始。政府も空軍の医療チーム150人を派遣するなど、必死にコロナの封じ込めを図る。



 一方で、この強力なゼロコロナ政策による弊害も出ている。西安市では23日以降の都市封鎖によって供給網や物流が混乱。住民らは食料などの必需品不足に陥る事態となっている。30代の女性会社員は毎日新聞の取材に「西安で今深刻なのはコロナではなく、食料の問題だ」と訴える。政府は「十分な供給量がある」と発表して沈静化を図るが、コロナの震源地となった武漢市の都市封鎖の際に問題となった食料不足が繰り返された形だ。

 ゼロコロナ政策は、都市封鎖だけでなく、都市間の移動の障害ともなっている。感染者が出た都市との往来が禁止されたり、一定期間内に感染地域を訪問したことがある市民に外出禁止が命じられたりする措置が相次ぎ、ビジネスへの影響が出ている。ワクチン接種についても衛生当局は25日、「12億人が接種を完了した」と成果を強調したが、ゼロコロナ政策から規制を緩める気配はなく、ネット上では疑問の声も上がる。



 来年2月には北京冬季五輪、秋には5年に1度の共産党大会を控えており、北京の外交筋は「当分は『ゼロコロナ』でいくのではないか」との見方を示す。中国国内での感染拡大は、他国に比べコロナ対策の行動規制が成果を上げているとアピールしてきた習近平体制の「制度的優位性」が揺らぐことになるため、当局は厳しい規制を続ける見通しだ。【北京・岡崎英遠】