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毎日新聞 2021/12/30 19:50(最終更新 12/30 20:12) 901文字




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放火事件の当日に雑居ビル方面に自転車で向かう谷本盛雄容疑者とみられる男性。防犯カメラの一つに記録され、自転車後部の荷台には紙袋とみられる荷物を積んでいた=大阪市内で2021年12月17日午前9時50分ごろ(飲食店提供)

 大阪市北区の雑居ビルに入るクリニックで男女25人が死亡した放火殺人事件で、大阪府警は30日夜、意識不明の重体だった谷本盛雄容疑者(61)=職業不詳=が死亡したと発表した。煙を吸い込んだことに伴う重度の一酸化炭素(CO)中毒が死因とみられる。容疑者への取り調べが不可能になり、事件の真相究明は極めて困難な状況になった。死者は計26人。

 大阪府警は今後、客観的な証拠の収集で動機などの解明を目指すことになる。


 捜査関係者によると、クリニックの患者だった谷本容疑者は事件後、院内で心肺停止状態で見つかった。谷本容疑者は救急搬送された大阪市内の医療機関の集中治療で蘇生したが、CO中毒の影響で脳に重大な障害を負い、意識不明の状態になった。顔などの重度のやけど治療も続いていた。



 谷本容疑者は12月17日午前10時20分ごろ、雑居ビル4階の「西梅田こころとからだのクリニック」の出入り口付近で、ガソリンにライターで火を付けて放火。院長の西沢弘太郎さん(49)ら25人を殺害した疑いが持たれている。

 谷本容疑者は放火後、患者らが避難できないよう院内の奥に追い込み、出入り口に比較的近い場所で倒れたとされる。このため救急隊に最も早く搬送されたとみられている。



 事件では、4階から運ばれた被害者26人は全て院内奥の診察室周辺で心肺停止状態で見つかり、うち25人がCO中毒で死亡したとされる。残る女性1人は今も重篤な状態が続いている。

 府警は、院内の防犯カメラ映像などから谷本容疑者が関与した疑いが固まったと判断している。自宅とされる大阪市西淀川区の民家からは、「大量殺人」と手書きされたメモや、36人が死亡した「京都アニメーション」放火殺人事件関連の新聞紙面も押収された。



 この民家には事件の約1カ月前から滞在していたとされ、谷本容疑者は11月下旬、付近で約10リットルのガソリンを購入。事件当日は民家から自転車で出発し、ガソリン入りの紙袋を積んでクリニックに向かったとされることも判明している。事件の綿密な計画性や強烈な殺意をうかがわせる物証などはそろいつつあるが、動機は今も浮かんでいない。【安元久美子、郡悠介】