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2022/1/8 21:29
産経WEST


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鼻血が止まりにくい、あざが多い−。違和感を覚えつつも見過ごしてきた症状が、実は遺伝性の疾患かもしれない。出血が止まりにくくなる「フォン・ヴィレブランド病」。特に女性は生理の際に影響が大きいが、診断を受けていない人も多い。病気の認知度の低さが一因で、日本血栓止血学会は昨年、診療ガイドラインを初めて策定。専門家は「知らないまま過ごしていると、事故や手術時に血が止まらないなどリスクがある。気になることがあれば受診してほしい」と呼び掛けている。

フォン・ヴィレブランド病は、止血に必要な血液中のタンパク質が不足したり、正常に機能しなかったりして出血が止まりにくくなる病気。国内で診断を受けた人は約1500人にとどまり、1万人以上が未診断と推計されている。

「まさか自分が血液の病気だったなんて考えてもみなかった」。そう話すのは大阪市内の児童指導員、小林栄美香(えみか)さん(27)。現在は定期的に血液内科を受診し、経過を観察しながら治療方法を模索している。

初めて大量出血したのは小学6年。まだ数回しか経験したことがない生理のときで、ナプキンから漏れた経血で布団が真っ赤に染まった。産婦人科を受診したが、医師は「生理が始まって間がなく、安定していないのだろう」と言い、検査も行わなかった。

その後は生理になると、学校を休んだ。出血量が多く、起き上がれないほどのだるさや頭痛などもあったが、「生理は病気ではない。母親も症状が重く、体質だから仕方がないと思っていた」。登校しても休み時間ごとに吸収力の高い夜用のナプキンを交換。介護用のオムツを着用したこともあった。生理前後には体調を崩し、「常に生理のことを考える生活だった」という。

診断がついたのは21歳のとき。持病の手術を前に行った血液検査で判明した。病気の説明を受け、妊娠や出産時には必ず血液内科のある病院を選ぶよう指導された。「対処法がわかって安心した。それと同時に、無自覚の怖さを感じた」

フォン・ヴィレブランド病は、女性の遺伝性出血性疾患では最も患者数が多いが、病気の認知度は医療関係者の間でも低い。こうした現状を踏まえ、日本血栓止血学会は昨年11月、血縁者の出血性疾患の有無など患者への聞き取りのポイント、鼻血や抜歯後の出血などで異常を疑う基準、血液中のタンパク質を補充する血液製剤の投与や飲み薬の服用といった治療方法などをまとめたガイドラインを作成。産婦人科医らを対象にした講演などで周知を図っている。

国立病院機構大阪医療センター(大阪市)血友病科の西田恭治医師は「たとえ日々の生活に支障がなくても、突然の事故や手術の際にリスクが高まる」と指摘。「生理は他人と比べることが少なく、『問題ない』と思い込みがちだが、そうとは限らない。鼻血などでも男女ともに出血に関して違和感があったら受診してほしい」と呼び掛けている。(地主明世)