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2022年1月12日 19時30分スポーツ報知

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 先日、日本の乳幼児の睡眠不足についてのweb記事をスポーツ報知ホームページで公開したところ、多くの反響が寄せられた。江崎グリコ株式会社がこのほど0歳から2歳までの子を持つ親800人にアンケートを行い、家庭における睡眠に関する課題を調査した結果を紹介したもので、なかには働く母親の過酷さについての意見が多く、乳幼児の睡眠不足について「社会的な問題」とみる意見が多かった。

 フルタイムで働いて、21時までに子供を寝かすのは「無理ゲー」「共働きで家に親が帰るのが夜7時を回ることが当たり前の社会でどうしろと?」「好きで遅く寝かせてるんじゃない」などの声がネット上に上がった。共働きでも育児や家事は現状、女性に偏りがちという声も多い。残業するのが当たり前のような雰囲気の職場で、早く帰ると周りの人に嫌な顔をされるという体験談も寄せられた。

 また、大都市などでは通勤時間が長い場合もあり、その場合はより帰宅時間が遅くなる。待機児童問題で保育園に入園することも難しく、入れても自宅や職場から遠い保育園になることも少なくない。

 仕事が終わって保育園へ子供を迎えに行き、大急ぎで家に帰ると夜ご飯を作り、子に食べさせ、風呂に入れて眠る態勢を整える。子供はその途中でぐずったり、遊ぶ。また、2歳頃になると体力がつき、寝ようとしてもまだ遊びたがったり、すんなり眠れないことも多い。子が寝た後も、親は家事や持ち帰った仕事をすることもあり、就寝時間が遅くなりがちだ。

 21時までに子供を寝かせることが望ましいという情報で「追い詰められた気持ちになる」という感想もあったが、決して自身を責めないでほしい。今回の調査を監修した熊本大名誉教授で小児科医の三池輝久氏も「ヒトの体内時計は2歳までにほぼ完成する。2歳までに夜9時前に寝る習慣を」と呼びかけつつ、「子どもの成長には、個人差があります。あくまでも目安とお考えください」と説明していた。

 睡眠不足なのは子供だけではなく、大人も世界一睡眠時間が短い。2018年に発表された経済協力開発機構(OECD)の調査では7時間22分で世界ワースト1位。ブレインスリープ社(本社・東京)が20年に行った調査によると6時間27分で、OECDの調査よりさらに55分短いことがわかった。21年の調査では6時間43分と、昨年より16分長くなったが、OECD加盟国の平均睡眠時間は8時間25分と比べると、1時間42分の差がある。

 「乳幼児がいる家庭だけが早く帰るんじゃなくて、独身の人も介護がある人もみんな早く仕事が終わる社会であってほしい」と願う声もあった。乳幼児の睡眠不足を解消するには、社会全体で大きな変化が必要になっている。