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毎日新聞 2022/1/12 19:50(最終更新 1/12 20:04) 973文字




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文部科学省=東京都千代田区で

 新型コロナウイルスの影響で大学入学共通テストを受けられなかった受験生への救済措置として、文部科学省が11日に出した通知に対し、今後、対応を迫られる国公私立大学に戸惑いや反発が広がっている。各大学が実施する個別試験だけでの合否判定を求めたが、共通テストを受けた受験生との公平性をいかに保つかなど課題が多いためだ。

 共通テストは、本試験が15、16日、追試験が29、30日に実施される。文科省は新型コロナに感染したり、濃厚接触者になったりして、両試験とも受けられない場合、個別試験の結果で合否を決めるよう求めた。さらに個別入試やその後の追試なども受けられなければ、面接や書類選考の総合型選抜(旧AO入試)などによる「再追試」を実施するよう要請。合否判定や入学手続きで入学が4月以降にずれ込むことまで認めるとした。



 「入試のことを直前になって急に言われても……」。西日本の国立大幹部は通知に困惑した様子だ。そもそも個別試験では感染拡大に備え、前期・後期日程の他に追試の日程も設けていた。だが、文科省はさらに「再追試」まで求めてきた。

 「『再追試』と言われても、今から問題は作れない。調査書や面接で合否を決めることになるのだろうが、通常日程の受験生と同じ基準で判定するのは容易ではない」と頭を抱える。



 個別入試のみでの合否判定についても、「課題が多い」と打ち明ける。共通テストで5教科7科目を課す代わりに、個別入試で課す教科数を絞っているからだ。「幅広い学力を持つかどうか判断できない。共通テストを受けた受験生との公平性の担保も難しい」

 京都府内にある私大の広報担当者は「すでに共通テストとの併用、一般入試ともに受験生の出願を締め切っている。共通テスト直前のタイミングで方針を示されても対応できない」と不満を漏らす。今後、対応は検討するが、「入試問題は1年かけて作られる。新しい問題を作るには時間が足りない」と話した。



 一方、ある公立大の入試担当者は、文科省が年末にオミクロン株の濃厚接触者の受験を一律に認めないとして批判を浴び、岸田文雄首相の指示で撤回した経緯に触れて「政府として今回も配慮をアピールしたかったのかもしれないが、英語民間試験や記述式問題の導入で混乱を招いたのも政治主導だった。現場を見ない同じ構図だ」。【大久保昂、千脇康平、遠藤大志】