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毎日新聞 2022/1/19 08:43(最終更新 1/19 08:43) 774文字




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羽田空港の駐機場に並ぶ全日空機と日本航空機=2020年10月、本社ヘリから

 米通信大手AT&Tとベライゾン・コミュニケーションズは18日、19日に予定する第5世代(5G)移動通信システムの新サービスについて主要空港周辺での導入を延期すると発表した。新サービスが利用する周波数帯が航空機の通信機器に干渉する可能性があり、米航空業界が「航空機の運航に壊滅的な影響を与える」と警告したため。この措置で航空ダイヤの混乱が回避できるかどうかは明らかになっていない。

 問題となっているのは5Gの新サービスが利用する「Cバンド」と呼ばれる周波数帯。広域で高速通信が可能になる特性があり、5Gの利便性が大きく向上すると期待されている。



 ところが、米連邦航空局(FAA)は、Cバンドが悪天候時の着陸に必要な航空機の電波高度計に悪影響を与える可能性があると指摘。米ロイター通信によると、航空業界は「Cバンドが導入されれば、悪天候時には1日に1100便以上、乗客10万人に影響が出る恐れがある」と警告していた。

 FAAは旅客機の電波高度計が安全に機能するか確認作業を進めており、16日時点で民間機の45%の安全チェックを完了した。しかし、米航空機大手ボーイングの大型旅客機「777」など安全確認が終わっていない一部機種は、Cバンドの影響を受ける空港での悪天候時の着陸が禁止される恐れがあり、全日本空輸と日本航空など航空各社が米国便の欠航を決めるなどの影響が広がっている。



 米通信業界は「Cバンドはすでに世界約40カ国で利用されているが、航空機に悪影響を与えたとの報告はない」と反論している。しかし、航空業界の強い懸念を受け、AT&Tとベライゾンは主要空港周辺でのCバンドの運用を延期することを決めた。ただ、両社はどのエリアでCバンド導入を見合わせるのかを明らかにしておらず、航空ダイヤの混乱が回避できるかどうかは不透明だ。【ワシントン中井正裕】