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[ 2022年1月21日 05:30 ]

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首相を巡る自民党派閥の構図
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 「佐渡島の金山」(新潟)の世界文化遺産への政府推薦を2021年度は見送る方向で検討していることが20日、分かった。かつて朝鮮半島出身者が過酷な労働に従事したと韓国が反発。23年の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会での登録は見込めないとの判断に傾いた。

 政府は24年以降の登録を目指す方針だが、自民党の保守系議員からは「推薦すべき」との声が高まっており、2月1日のユネスコへの推薦書提出期限までに最終判断する。

 安倍晋三元首相は20日の派閥会合で「最終的には岸田首相をはじめ政府が決定することだが、ただ論戦を避ける形で登録を申請しないのは間違っている」と政府を強くけん制。朝鮮半島出身者が強制労働させられたとする韓国の主張を念頭に「ファクト(事実)ベースで反論していくことが大切だ」と述べ、政府の推薦を予定通り進めるよう求めた。

 岸田政権の弱腰ぶりを強調するかのような安倍氏の発言には、自らの存在感を強くアピールする狙いがあったとの見方も出ている。最大派閥を背景に影響力を保持するが、この先も安泰とは言い切れない状況だからだ。岸田派(宏池会)、同会の流れをくむ麻生派、谷垣グループによる緩やかな連携が進んでいるとされる中、谷垣グループが水曜開催の例会を他派閥と同じ木曜に変更。派閥化への一歩と目されている。

 安倍氏サイドが警戒するのが、この3つが再結集する「大宏池会」構想。実現すれば100人超の第1派閥となり、安倍氏の影響力低下は必至だ。

 一方、安倍氏の影響力がより及ぶ保守系議員は、提出期限が迫る中、突き上げの動きを活発化。議員連盟「保守団結の会」は安倍氏も参加した18日の会合で、政府に推薦を求めて決議。代表世話人の高鳥修一衆院議員は「何をどう検討し判断したのか明らかにしていただかないと、新潟県民の理解も国民の理解も得られない」と指摘した。高市早苗政調会長は19日の会見で「日本の名誉に関わる」とボルテージを上げた。

 推薦を見送れば保守系の岸田離れが加速し、安倍氏の動向も絡み、主要派閥に支えられる政権構造に大きなしこりを残す可能性もありそうだ。

 《関係国の合意重視“ブーメラン”に》日本が言いだしたことが“ブーメラン”のように返ってきていることが、今回、政府の判断を悩ませている要因の一つだ。

 佐渡金山は、かつて朝鮮半島出身者が働いていたとの記録が残っており、韓国外務省報道官は候補選定撤回を求める論評を出した。これはユネスコが昨年、貴重な文書などを登録して保存する「世界の記憶」で、関係国の異議申し立てを認め、合意がなければ審査に入らないとする制度を導入したことが背景にある。この改革を主導したのが日本だった。「南京大虐殺」関連資料の登録を巡ってのことだった。

 関係国の合意を重視するよう訴えてきた日本が、韓国の反対する案件を推薦するのは説明がつかないとの指摘が政府内にもある。これがネックとなって推薦見送り案が浮上した。