https://mainichi.jp/articles/20220121/k00/00m/040/343000c

毎日新聞 2022/1/22 06:30(最終更新 1/22 06:30) 1218文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/01/21/20220121k0000m040348000p/9.jpg
新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、全国の小学校、中学校、高校、特別支援学校に休校を要請すると表明した安倍晋三首相(当時、中央)=首相官邸で2020年2月27日、川田雅浩撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2020年春の全国一斉休校の際、親が大学を卒業していなかったり、シングルマザーだったりする家庭の子どもが、学習支援を受けづらい傾向にあったことが、東京大大学院の中村高康教授(教育社会学)らの研究グループの調査で分かった。社会的に不利な立場に置かれている家庭の児童・生徒ほど、一斉休校の負の影響を強く受けていた可能性がある。

 調査は、文部科学省の委託で21年2月に実施。全国の小中学校の小学5年と中学2年の各約9000人とその保護者を対象に、親の学歴や一斉休校時の家庭での学習状況などを各学校を通じて尋ねた。両親とも大卒▽両親のいずれかが大卒▽両親とも非大卒▽シングルマザーで大卒▽シングルマザーで非大卒――に分類し、分析した。



 中2では、勉強を手伝ってくれる人がいないことが「毎日またはほとんど毎日」「週に1〜2回」と答えた割合は、「両親大卒」が13・9%▽「いずれか大卒」が18・8%▽「両親非大卒」が23・3%▽「シングル大卒」が20・6%▽「シングル非大卒」が28・6%。宿題がよく分からない状況が「毎日またはほとんど毎日」「週1〜2回」の割合も、「両親大卒」が20・8%だったのに対し、「シングル非大卒」は38・4%と2倍近くに達した。

宿題やプリント、環境差補える可能性
 一方、休校中の勉強法や学習形態の中には、家庭環境によって差がつきやすいものと、差が付きにくいものがあることも分かった。




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2022/01/21/20220121k0000m040337000p/9.jpg
東京大大学院の中村高康教授=本人提供

 差が小さかったのは、学校の宿題だ。ほぼ毎日やっていた中2の割合は、「両親大卒」が57・1%と最も高かったが、「シングル非大卒」も44・0%と差は比較的小さかった。宿題以外の勉強をほぼ毎日していた割合となると、「両親大卒」が42・2%だったのに対し、「シングル非大卒」は19・4%と2倍以上の差が開いた。研究グループは「休校中に適切な宿題を提示することは、家庭の学習環境の差を補える可能性がある」と指摘する。

 また、学習法では、学校から配られたプリントの学習は「きちんとやった」と答える生徒の割合が「両親大卒」で78・9%、「シングル非大卒」でも62・3%と総じて高く、家庭環境による差も小さかった。



 一方、デジタル教材の活用やインターネットを通じた教員とのやり取りなどのICT(情報通信技術)を用いた学習は、「きちんとやった」と答える生徒の割合が、どの家庭区分でも1〜4割と低く、親の学歴によって差が生まれやすい傾向も見られた。プリント学習のように、やるべきことが明確な課題の方が、多くの子どもが取り組みやすいとみられる。

 中村教授は、調査結果について、小学5年もほぼ同様の傾向だったとし、「両親が非大卒やシングルマザーの家庭は一斉休校の際、子どもの教育に手が回らず、サポートを必要としていた可能性を示唆している。休校を検討する場合、こうした影響に留意する必要があるだろう」と話した。【大久保昂】