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2022年01月23日07時11分

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バイデン米大統領(画面内)とのテレビ会談に臨む岸田文雄首相=21日夜、首相官邸(内閣広報室提供)

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日米首脳テレビ会談を終え、取材に応じる岸田文雄首相=21日夜、首相官邸




 岸田文雄首相はバイデン米大統領との21日のテレビ会談で、基軸とする対米外交を本格的にスタートさせた。中国をにらんだ経済や安全保障の連携強化に加え、核軍縮や中間層重視の経済政策といった双方に親和性のあるテーマを議論。緊密な関係構築に向けてバイデン氏との個人的な接点を探った。
 ◇思惑一致
 会談では、外務・経済担当閣僚による「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)新設で合意した。中国への対抗策としてサプライチェーン(供給網)強化やインフラ投資などの協力を想定しており、インド太平洋地域の「新たな経済枠組み」を模索するバイデン政権と、米国の関与を望む日本側の思惑が一致した。
 安保分野では、首相が防衛力の抜本強化に取り組む方針を伝えた。覇権主義的な動きを強める中国や核・ミサイル開発を着々と進める北朝鮮の動きを踏まえ、米側は日本の役割拡大を期待しており、これに応えた形だ。両首脳は「台湾海峡の平和と安定」の重要性も確認した。
 首相がバイデン氏との相互信頼を重視するのは、安倍晋三元首相が当時のトランプ大統領と良好な関係を築き、国際社会で一定の存在感を示したことが念頭にあるためとみられる。中曽根康弘氏とレーガン氏、小泉純一郎氏とブッシュ(子)氏の例が示すように、米大統領との緊密な関係は政権の長期安定の必要条件という見方もできる。
 ◇意気投合
 今回、首相は持論の「核兵器のない世界」に向けた協力を積極的に取り上げ、「バイデン氏との信頼関係に基づき、国際的な取り組みをリードしていきたい」と提起。核軍縮・不拡散を訴えたオバマ元大統領の系譜を受け継ぐバイデン氏は「支持する」と応じた。
 首相は看板政策「新しい資本主義」をめぐっても一致点を見いだそうとした。「行き過ぎた資本主義の弊害を是正しなくてはいけない」。首相がこうした自説を展開すると、「ミドルクラス(中間層)のジョー」の異名を取るバイデン氏は「まさにそれをしたくて大統領になったんだ」と呼応。首相も次第に熱くなり、会談は予定の時間を20分ほどオーバーした。
 ◇視界不良
 両首脳は、今春にもバイデン氏が来日し、オーストラリアとインドを加えた4カ国連携の枠組み「クアッド」の首脳会議を日本で開くことで一致した。今夏、首相は長期政権への足掛かりをつかめるか勝負の場となる参院選を迎える。クアッド首脳会議が予定通り実現すれば、外交面で指導力を示す舞台になり得る。
 一方で懸念材料はある。バイデン氏は内政問題でつまずき支持率が低下。11月の中間選挙は苦戦が見込まれる。「外交まで手が回らないだろう」。日本政府関係者からもこうした声が漏れる。
 核軍縮に関しては、ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が高まるといった情勢も重なり、国際社会の機運は決して高くない。「米国はそんなことに労力を割いている場合ではない」(自民党国防族)と冷めた見方も多く、首相の思惑通りに共同歩調を取っていけるか見通せない。