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毎日新聞 2022/1/31 21:26(最終更新 1/31 21:35) 855文字




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トヨタ自動車と和解が成立したことを報告する男性の妻(中央)=名古屋市内で2022年1月31日午後4時24分、道永竜命撮影

 トヨタ自動車に勤務していた男性社員(当時40歳)が2010年に自殺したのは過密な業務と上司のパワーハラスメントにより、うつ病を発症したのが原因だとして、愛知県豊田市に住む男性の妻(50)と長女(20)が同社を相手取り、計1億2300万円の損害賠償を求めた訴訟は裁判外で和解が成立した。遺族側代理人が31日、発表した。また、同社の豊田章男社長が遺族と会い、直接謝罪したことも明らかにした。

 和解成立は27日付で、遺族側が名古屋地裁での訴訟を取り下げた。遺族側によると、同社が過重な業務と上司のパワハラが原因で死亡したことを認め、解決金を支払うことで合意した。解決金の額は非公表。合意書では同社が、安全配慮義務を尽くさなかったことにより男性を死亡させた責任を認めて遺族に謝罪▽パワハラを防止し、二度と同様の事態を起こさない努力をする▽今後5年間は遺族に再発防止策の取り組み状況を報告する――ことなどが盛り込まれた。合意に先立ち、就業規則に違反した関係者を処分した。



 男性の自殺を巡っては、名古屋高裁が21年9月「業務と自殺との間に相当因果関係があると認めるのが相当だ」などとして労災を認定し、同年10月に確定。これを受け、同社は同月、遺族側に和解を申し入れ、豊田社長が妻らと面会。深々と頭を下げて謝罪した上で「事件発生以来11年もの間、放置されたのは社内の隠蔽(いんぺい)体質によるもの。社長就任以来、会社の隠蔽体質の改革に努めてきたが、いまだ道半ば。隠蔽体質を一掃する」と述べ、特別チームを編成して徹底的に調査するとの決意を示したという。

 訴状などによると、男性は1990年入社。08年4月から新型プリウスの部品を生産するラインの立ち上げ業務に携わった。一方で、繰り返し上司から叱責を受け、09年10月ごろ、うつ病を発症し、10年1月に自殺した。



 同社では17年、当時28歳だった別の男性社員が自殺。豊田社長は、男性の上司のパワハラと自殺との因果関係を認め、男性の遺族に直接謝罪している。【道永竜命、立山清也】