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2022年02月02日20時59分

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(左から)林芳正外相、岸田文雄首相、自民党の佐藤正久外交部会長




 ロシアによる軍事侵攻の懸念が強まるウクライナ情勢をめぐり、日本政府が対応に苦慮している。制裁方針を掲げた場合、懸案の北方領土交渉への影響が否定できないためだ。自民党からは、強力な制裁実施で欧米と足並みをそろえるべきだとの声が上がっており、政府は領土問題と党内世論のはざまで難しい判断を迫られそうだ。


 林芳正外相は2日、ブリンケン米国務長官と電話会談を行い、ウクライナ情勢について「重大な懸念」を共有した。ただ、経済制裁について協議したかは「外交上のやりとり」だとして、記者団に明らかにしなかった。
 岸田文雄首相は1月のバイデン米大統領とのテレビ会談で「(ロシアの)いかなる攻撃にも強い行動を取ることを調整する」ことで一致。だが、その後は具体的な動きが見えてこない。
 外務省関係者は「制裁が領土交渉にどう影響するか、慎重に見極めなければならない」と話す。安倍政権時代に暗礁に乗り上げて以降、停滞している領土交渉だが、ウクライナ問題でロシアを刺激すればさらに解決が遠のきかねないとの見方が底流にある。
 これに対し、1日の自民党会合では、出席者が「制裁で先進7カ国(G7)と連携しないとだめだ」と主張。佐藤正久外交部会長は中国を念頭に「台湾有事の際に欧州に応援をお願いしても説得力がなくなる」と政府を突き上げた。
 もっとも、安倍政権は、ロシアが2014年にクリミア半島を併合した際、ビザ(査証)発給要件緩和の協議停止などの制裁に踏み切ったものの、実効性の乏しい措置との評価が付きまとった。外務省幹部は「真空斬りと言われた」と当時を振り返る。日ロの間に領土問題が横たわっている状況に変化はなく、岸田政権もジレンマを抱える。
 こうした事情を見透かすように、ロシアのガルージン駐日大使は2日、日本外国特派員協会で記者会見。対ロ制裁論について「逆効果となり、日ロ関係の前向きな雰囲気の醸成に資さない。日ロ関係に対する責任のある対応を心から期待する」と日本側をけん制した。