https://www.sankei.com/article/20220206-JKKYMG6VYBKLZJQAJLEJ7H6QF4/
2022/2/6 05:00



「平和の祭典」である五輪の開会式を迎えた北京が舞台である。中国の習近平国家主席が武力行使の自制を求め、ロシアのプーチン大統領が応じる。それが、大国の指導者に期待された振る舞いではなかったか。

だが中露首脳の約2年ぶりの対面会談はそれとほど遠いものだった。

ウクライナ周辺は昨年来10万人超のロシア軍が集結し、緊迫している。ロシアは2014年、ウクライナのクリミアを併合した。再侵攻で大きな犠牲が出るのは想像に難くない。武力行使の阻止は国際社会の喫緊の課題だ。

ロシアが要求しているのは、ウクライナや周辺の旧ソ連構成国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないとの確約だ。だが、米欧は各国を縛れないと拒否し、交渉は継続している。

中露首脳会談の共同声明は、「NATOのさらなる拡大に反対する」と明記し、ロシアの立場を明確に支持した。ロシアが再侵攻に踏み切った場合、容認したと取られかねないのではないか。

米国のインド太平洋戦略や米英豪の安全保障の枠組みAUKUS(オーカス)への反対など対中包囲網への警戒も盛り込まれた。

北京五輪開会式は、米欧の多くの国が外交的ボイコットをして、出席した首脳は少なく、プーチン氏は主役級のゲストとなった。

今回の首脳会談が、中露のさらなる結束強化につながる可能性もあり、警戒を強めねばならない。同時に、その結束がどこまで本物か見極めることも重要だ。

中国は、ウクライナから空母を購入するなど同国の軍事産業と密接な関わりがあり、両国は良好な関係を維持してきた。今回、ロシア側に立った経緯などを冷静に分析し、それを踏まえ、中露共闘と向き合わねばならない。

北朝鮮問題でも、中露が米欧と対立し、国連安全保障理事会が機能しないのは大きな問題だ。4日の会合でも、制裁強化を主張する米国に中露が反対し、安保理として声明を出せなかった。

明らかなのは中露が、世界平和や繁栄に向かうのでなく、反米と、互いの言い分を認めあうために共闘しているということだ。

国際秩序に挑戦し、力による現状変更をいとわない中国やロシアに日本は与(くみ)することはできない。中露両国にはあくまで、態度を変えるよう求めていくべきだ。