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プーチンは「焦ってる」…ロシアで起きている「3重苦」の危ない正体
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92036
天然ガスが話題になることが多いが、ロシア経済の屋台骨は原油である。ロシアの石油産業は同国のGDPの15%、輸出の40%、連邦財政の歳入の30%を占めている。
「ソ連崩壊を招いた大本の原因は1980年代後半の原油価格の急落であり、21世紀に入り世界の原油価格が再び上昇したことでプーチン大統領はロシアを大国の地位に復活させることができた」とする説があるくらいだ。
だが、いまそんなロシアの命運を握る石油産業に異変が生じつつある。

「経済制裁はなんとしてでも回避したい」本音
ロシアを石油大国の地位に押し上げたのは、西シベリアのチュメニ州を中心とする油田地帯だった。
巨大油田が集中し、生産コストが低かったが、半世紀以上にわたり大規模な開発が続けられた結果、西シベリア地域の原油生産はすでにピークを過ぎ、減産段階に入っている(過去10年で約10%減少)。
ロシアが原油生産量を維持するためには東シベリアや北極圏などで新たな油田を開発しなければならないが、
2014年のロシアによるクリミア併合に端を発する欧米諸国の経済制裁の影響で技術・資金両面から制約を受け、期待通りの開発が進んでいない。
ロシア政府が2020年に策定した「2035年までのエネルギー戦略」では「2035年時点の原油生産量は良くても現状維持、悪ければ現在より約12%減少する」と予測している。
その後ロシア政府高官が相次いで「自国産原油の寿命は20年に満たない可能性がある」とする悲観的な見方を示している。

さらに、ロシア経済のもう一つの悩みは深刻な人口減少だ。
ロシア連邦統計局は1月28日に、「同国の人口が昨年に100万人以上減少した」と公表した。
減少幅はソビエト連邦崩壊以降で最悪であり、日本の年間の人口減少数をも上回っている。

ロシアでは2020年から食料品を中心にインフレが進んでいる。昨年12月のインフレ率は8.4%と中央銀行の目標値(4%)の2倍以上となった。
ウクライナ情勢の緊迫化により通貨ルーブル安も進み、「輸入品の価格上昇でインフレ率が2桁になる」との懸念が高まっている。
ロシアの中央銀行は昨年12月、主要政策金利を7回連続で引き上げており、金利高による景気悪化も現実味を帯びつつある。
プーチン政権の長期化への不満がこれまでになく高まっている中で、インフレと不景気の同時進行(スタグフレーション)が起きるリスクが生じている。ソ連崩壊後の1990年代前半のインフレや経済の混乱は極めて深刻だった。
忍び寄るインフレの足音がソ連崩壊時の悪夢をプーチン大統領の脳裏に呼び覚ましていたとしても不思議ではない。
強面に映るロシアだが、経済は非常に脆弱なのだ。