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毎日新聞 2022/2/7 19:27(最終更新 2/7 19:27) 846文字




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「熊本県産は売れない」と言われ、卸業者から引き取ったハマグリを漁場に戻す川口漁協の漁師ら=川口漁協提供

 「熊本県産」として流通するアサリの大半が中国産や韓国産だった可能性が明らかになった問題で、熊本県内の漁業者は8日から2カ月程度、県産アサリの出荷を停止する。本物の出荷を止めて市場の偽装アサリをあぶり出す狙いだが、アサリ問題のあおりを受けて無関係のハマグリまで入札が止まるなど、思わぬ余波が広がっている。

県産アサリ、8日から出荷停止
 「(流通に関わる)一部業者が産地を偽装してきた。被害を受けるのは真面目にやってきた漁師だ」。漁業者約130人が天然のアサリやハマグリを出荷する川口漁協(熊本市南区)の藤森隆美組合長(71)は語気を強めた。県漁連会長も務め、県の要請で県全体の出荷停止に踏み切った。




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予定されていた入札が中止になり、漁協で引き取らなければならなくなったハマグリ=川口漁協提供

 川口漁協は2020年7月の九州豪雨でアサリの漁場に大量のヘドロが流れ込み、1年間、全く漁獲できなかった。21年からようやく少しずつ取れるようになったところだった。

 打撃はアサリにとどまらない。アサリの漁獲量が激減した現在、貝類の販売収益は9割超が天然ハマグリによるものだが、卸売業者から「ハマグリも『熊本県産』では売れない」と伝えられ、10日に予定されていた入札が中止に。既に落札されていた約1・9トンも販売中止になり、引き取って漁場の海に戻す羽目になった。川口漁協は当面、ハマグリの漁獲も止める。藤森組合長は「ハマグリまで売れなければ収入はゼロだ。漁師の生活を奪うに等しい」と話す。



 店頭からは熊本県産アサリが姿を消す。イオン九州(福岡市博多区)は偽装の発覚以降、書類で産地を確認できた熊本県産アサリに限って産地証明を掲示して販売。7日までに仕入れたアサリは9日ごろまで売られる見込みだが、以降は中国産も販売する。グリーンコープ生活協同組合連合会(福岡市)は「熊本県産」が使われていた冷凍「国内産むきアサリ」の販売を休止して産地確認を急ぐ。国産素材にこだわっているため中国産は使わない方針で、担当者は「北海道産や広島県産などの調達量を増やせるよう交渉したい」と話す。【栗栖由喜、蓬田正志】