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毎日新聞 2022/2/9 13:01(最終更新 2/9 13:03) 1220文字




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一宮中学校が導入するブレザータイプの標準服。性別に関係なく、ズボンとスカート、ネクタイ、リボンを自由に組み合わせられる=高松市一宮町で2022年2月3日午後4時23分、西本紗保美撮影

 「男子は詰め襟、女子はセーラー服」の高松市立中学校で、2022年度から一宮中(同市一宮町)が初めてブレザータイプの標準服(制服)を導入する。ズボンやスカートを自由に選べる「ジェンダーレス」な組み合わせが特徴だ。市教委は心と体の性が異なるトランスジェンダーを含むLGBT(性的少数者)への配慮が欠ける校則などを見直すよう求めており、香川県内の他校に同様の取り組みが広がるか注目される。

 一宮中の従来の標準服は男子が詰め襟にズボン、女子がセーラー服にスカートで、女子のズボンや男子のスカート着用は想定していなかった。新しく導入する標準服は、男女同じデザインのジャケットに長袖か半袖のポロシャツを合わせ、下はズボンかスカート、首元はネクタイかリボンを自由に選べる。今後3年間は新旧どちらの標準服を着用してもかまわない。同市では小学校も詰め襟とセーラー服が定着しており、ジェンダーレスのブレザーは市立の小中学校で初めてとみられる。




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一宮中学校の従来の標準服。男子は詰め襟(右)、女子はセーラー服となっている=同校提供

 自分の体の性に違和感を持ちながら男女別の標準服を着させられて精神的苦痛を受けるケースが指摘されており、21年夏から新たな標準服の導入を検討してきた。PTAや学校運営協議会と協議し、10月に導入を決定。従来より値段が下がり、アイロンも不要で保護者からは好評という。大荒恵太指導主事(36)は「これまでは当事者から『制服を着たくない』と言われたら体操服登校を認めることくらいしか手立てがなかった。今はそれでは不十分。当事者の生徒が必ずいると想定して動く必要がある」と話す。

 2月2日、新標準服を試着した生徒会長の久保翔(しょ)音(おん)さん(2年)は「中学生でも男女関係なく、自分らしく好きなスタイルを選んでいけると良い」と語り、副会長の林真希さん(2年)も「ブレザーは高校生っぽくて憧れ。(性差のある)制服で学校に来られない人の悩み解消の後押しになれば」と話した。



 平松直校長(57)は「まずは教員が生徒に『男らしさ、女らしさ』を押しつけないよう意識改革する必要がある。人権教育で伝えている『一人一人を大切にする』という考え方を、標準服の選択にも取り入れたい」と語る。

 市教委が21年11月に定めた校則などに関するガイドラインでは、性の多様性やさまざまな文化への配慮に欠ける内容などを見直し、2月末までに市教委に報告するよう各校に求めた。ただ、標準服などの市一律の対応は決めておらず、各校の取り組みに委ねている。



 LGBTの児童生徒からの相談を受けている高松市内の当事者団体「あしたプロジェクト」の福井瑞穂副代表によると、中学進学前の子どもや保護者から毎年、男女差のある制服について不安の声が届くという。福井さんも女性から男性に性を変えた当事者で、「僕も小中学校のセーラー服が嫌で、当時は本当に我慢していた。転校を考えるほど悩む当事者もいる。一宮中のような取り組みが広がってほしい」と期待を寄せている。【西本紗保美】