自民、立憲民主両党は9日、衆院憲法審査会を10日に開いて自由討議を行うことで合意した。新年度予算案の衆院通過前に開催するのは2013年以来で、改憲論議の加速につながる可能性もある。立民は予算審議中の開催に慎重だったが、改憲を目指す自民党に加え、昨秋の衆院選で勢力を伸ばした日本維新の会や国民民主党が開催を強く求め、異例の早期審議に応じざるを得なかった。
◆改憲論議が進むことへの警戒感も
 与党側との交渉を担当する立民の奥野総一郎氏は合意後、記者団に「われわれは元々、議論はやっていこうと言っている」と強調。改憲手続きを定めた国民投票法の改正や、国会のオンライン審議導入など、立民の求める議論の推進について「一定程度の感触を得られた」と、開催に合意した理由を説明した。

 憲法審の日程は、与野党第一党同士の協議で決めるのが通例。野党第一党の立民はこれまで、予算案が衆院を通過した後の散発的な開催のみ応じてきた。
 だが、昨年の衆院選では立民が議席を110から96に減らす一方、改憲に積極的な維新が41議席に躍進。同じく議席を伸ばした国民とともに憲法審の毎週開催を訴え始めた。
 野党を代表して交渉する立民に批判が集まり、党内では「このままではわれわれ抜きで開かれる可能性もある」(幹部)との懸念が浮上。泉健太代表が「論憲」を唱えていることもあり、党関係者は「『立民だけが開催に応じない』と批判されるのは損だ」として方針転換した。
 予算通過前の開催決定を契機に、自民党などのペースで改憲論議が進むことへの警戒感もある。奥野氏は「頻繁に開いて予算そっちのけで粗雑な議論をするのは良くない」とけん制するが、次週以降の開催は否定していない。
 今後、衆院憲法審が毎週開催された場合、会期末の6月15日まで計17回開かれることになる。立民が主張する国民投票法などの議論にとどまらず、自民が掲げる改憲4項目など憲法本体の議論まで進む可能性も否定できない。(井上峻輔、木谷孝洋)

東京新聞 2022年2月10日 06時00分
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