新型コロナウイルス対応で全世界から新規入国を原則停止する水際対策を巡り、与党に緩和論が広がってきた。

自民党の安倍晋三元首相は10日の安倍派総会で日本の対策について「世界の中でもまさに一番厳しい」と語った。「ビジネスの交流ができないと世界経済のなかで日本が立ち遅れていく危険性に直面していく」と指摘した。

安倍氏は外国人留学生の入国が原則停止されてきたため留学プログラムを取りやめようとする動きがあると説明した。新型コロナの国産治療薬を普及させることが重要だとの認識を示した。治療薬普及を条件に対策緩和の必要性に触れたものだ。

公明党の山口那津男代表は同日の記者会見で留学生の受け入れを政府に求めた。「留学を望む人に感染症の対策をしっかりとった上で道を開くことを政府に検討していただきたい」と話した。「日本の留学生を迎える国が増えてきている」とも強調した。

自民党幹部は変異型「オミクロン型」について「これだけ市中感染している。水際だけ厳しく取り締まるのは意味がない」と言及した。

文部科学相経験者は「留学生は日本にとって貴重な人材だ。入国制限が緩い国に流れてしまえば日本にとって損失だ」と説く。

与党内には安倍、山口両氏が緩和に言及したのを受け「潮目が変わってきている」との受け止めが出てきた。

政府はオミクロン型への対応で2021年11月から外国人の新規入国を原則停止した。卒業や進級に支障がある国費留学生などに限り22年1月から一部容認している。

水際対策の緩和は日本の経済界が繰り返し訴えてきた。在日米国商工会議所なども厳しい入国制限の緩和を要請した。

日本経済新聞 2022年2月10日 16:36 (2022年2月11日 1:10更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA105F40Q2A210C2000000/