参院選は幅広い有権者から共感が得られる社会像を明確にし、与党に挑んでいただきたい――。11日、国民民主党の党大会で日本最大の労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長が来賓あいさつに立った。「政策制度の実現に向けて党と連携を図る」と激励する内容だったが、参院選の「支援」には触れなかった。

 連合は1月、今後の政治方針を決める会議を開いた。「厳秘」と書かれた参院選基本方針案がメンバーに配られた。

 取り仕切るのは、日教組出身の清水秀行・連合事務局長。立憲民主党を支援する産業別労組(産別)、国民民主を支援する産別の幹部らがそろった。

 方針案には、支援政党が明記されていなかった。

 1989年結成の連合は、自民党にかわる「新しい政治勢力の形成」を掲げて、93年の細川政権や2009年の民主党政権では非自民勢力の結集を後押しした。民主党を源流にする政党の支援を明確にしてきたが、これまでとは明らかに違う異例の対応だ。

 さらには「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しないという姿勢を明確にする必要がある」と、共産党との連携・協力に歯止めとなる一文も盛り込まれていた。

 立憲民主党と国民民主党の最大の支援団体・連合が、支援政党を明記しない参院選運動方針案を出しました。両党への影響や野党共闘をめぐる動きについて3回にわたってお伝えします。

 その場で文言の意味を確認するやりとりはあったが、特に紛糾することもなく、方針案を大筋で了承。メンバーが席を立とうとしたとき、民間産別の幹部がおもむろに口を開いた。「自民党を支持するというように受け取られないよう、メディアに説明してくださいね」

 昨年の衆院選後、連合の新年交歓会に岸田文雄首相が出席し、芳野氏も官邸や自民党本部を訪れて、両者の接近に注目が集まる。産別幹部の発言は「自民シフト」と見られることを気にしたものだ。にもかかわらず、そんな方針案に異論がなかった背景を、出席者は「各産別ともに自らの組織内候補をどう当選させるかで頭がいっぱい。全体方針まで力を入れられない」と明かした。

 同じ頃、立憲は1週間後に予定していた泉健太代表と芳野氏の会談延期を申し入れた。

 参院選へ協力を確認する予定だったが「いま、連合から高いボールを投げられたら困る」(党幹部)。高いボールとは、連合が歴史的に労働運動で対立してきた共産との決別だ。

 昨年の衆院選で立憲と共産が進めた野党共闘について、連合から「基本政策や方向が大きく異なる政党同士が連携・協力することは、多くの有権者の理解を得ることは難しい」と見直しを迫られていた。

 参院選で1人区の改選議員を抱えており、共産との協議は必要だと立憲執行部は連合に伝えてきた。折り合えないまま、高いボールを受けることになった。(鬼原民幸)

立憲の期待崩れた会長人事 転換点に
 「与党1強状態を打ち破り、二大政党的体制のもとで与野党が切磋琢磨(せっさたくま)する緊張感のある政治にしなければならない。その転換点をつくるため、組織の総力を挙げて取り組む」

 支援政党がまとまらない背景には、連合自身の力の低下が否めません。与党支援に傾きやすい流れや、連合よりも早く「与党シフト」を始めた労組の内情を、記事後半でお伝えします。

 1月、連合の新年交歓会で芳…(以下有料版で,残り2951文字)

朝日新聞 2022年2月12日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/ASQ2B4DWVQ1TUTFK023.html?iref=comtop_7_05