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毎日新聞 2022/2/12 17:00(最終更新 2/12 17:00) 有料記事 2297文字




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日本性分化疾患患者家族会連絡会が出した声明文=2021年12月21日午後8時50分、岩崎歩撮影

 性染色体の型や性器の形などが生まれつき一般的な発達と異なる「性分化疾患」(DSD)という体の状態がある。その当事者でつくる団体が、米国のパスポート(旅券)に男女以外の「第3の性」の選択欄が設けられたことを機に声明を出した。「私たちは第3の性を求めていません」。その思いに耳を傾けた。【岩崎歩/科学環境部】

きっかけは米国旅券の性別「X」
 ヒトの性染色体にはX型とY型があり、多くの場合、男性は「XY」、女性は「XX」のペアを持つ。主にこの性染色体に基づき、性腺(精巣や卵巣)が形成され、男女それぞれに特徴的な性器が発育する。

 しかし、DSDは体の細胞が性ホルモンに反応しないことなどから、典型的ではない発達をたどる。生まれてすぐに検査で分かる場合もあるが、思春期や成人になってから判明することが多い。

 「私たちが恐れているのは、『男でも女でもない』と周囲に思われることです」。DSDの患者や家族でつくる「日本性分化疾患患者家族会連絡会」は2021年10月、こんな声明文を公表した。

 きっかけは、米国務省が発行するパスポートに、男女どちらの性別にも当てはまらない性自認を持つ人向けの「第3の性」を示す「X」の選択欄が設けられたことだ。

 多様な性自認が公的に認められる意義は大きい。だが、発行されたばかりのパスポートを受け取ったのがDSDの当事者だったことが大きく報じられ、「DSD=第3の性」という誤ったイメージが広がる恐れがあった。

 自身も当事者で…

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