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毎日新聞 2022/2/19 12:00(最終更新 2/19 12:00) 有料記事 1911文字




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ミニボートを操舵する様子を記者に見せてくれた坂田俊介さん=神戸市須磨区で2021年12月20日午後5時18分、村田愛撮影

 ユーチューバーの男性は小さなボートに乗り、一人で無人島へ向かった。上陸しようとした矢先にボートは転覆し、冬の海に投げ出された。幸い救助されたが、「運が悪ければ死んでいたかもしれない」と振り返る。近年、「ミニボート」と呼ばれる小さな船の利用者が増えている。取材を進めると、古くて新しい問題が見えてきた。

視聴回数稼ぎと達成感
 2021年12月12日午前8時ごろ、紀伊半島の南端にある和歌山県すさみ町の海岸。「tub orion」のチャンネル名でユーチューバーとして活動する坂田俊介さん(34)=山口県美祢市=は撮影スポットに設定した約600メートル沖の無人島「沖ノ黒島」を目指した。乗り込んだミニボート(長さ約2メートル)は秘境や離島での撮影を考え、20年にインターネット通販で約20万円で購入した。後部に出力1・47キロワットのエンジンがあり、波が穏やかなら時速10キロ弱で航行できる優れものだ。

 事前にネットで調べた風速予報は2メートル。波の高さは調べなかったが、体感的に問題ないと考えた。ライフジャケットを着て、頭には撮影用の小型カメラを固定。間もなく無人島の近海に着いた。

 島に上陸するため岩場に左足を乗せ、立ち上がろうとした瞬間だった。波の影響で水位が急に下がり、バランスを崩して海へ放り出された。寒さと恐怖で体が震える中、転覆したボートをなんとか元に戻して乗り込んだ。エンジンが浸水して壊れるリスクも考え、船内に積んでいたパドルを使って本州側に戻ろうとした。だが、どうあがいても出発地点の海岸に戻れない。



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