【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は23日、ドイツとロシアを結ぶ新しいガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」の運営会社と同社幹部に制裁を科すと発表した。22日に公表した対ロ制裁の第1弾の一環で、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に派兵を決めたロシアへの対抗措置になる。

米財務省によると、制裁の対象になるのは運営会社「ノルドストリーム2AG」とドイツ人の最高経営責任者(CEO)。在米資産が凍結され、米企業との取引が禁じられる。CEOは旧東独の情報機関出身で、ロシアのプーチン大統領に近い人物とされる。12年にロシアから名誉勲章を授与され、ロシア国営の石油会社幹部などを歴任した。

バイデン政権は2021年5月にパイプラインの建設に関わる船舶に制裁を科した一方、運営会社とCEOを制裁対象から除外した経緯がある。制裁リストから外した当時のバイデン政権の判断をめぐっては、野党共和党から強い批判が出ていた。

バイデン氏は23日の声明で「ロシアがウクライナに侵攻した場合、ノルドストリーム2を停止するよう緊密に調整してきた」と指摘。23日に制裁を科すよう指示したと明かした。「ロシアの行動がエスカレートすれば、さらなる措置の発動にちゅうちょしない」と警告した。

ロシアによるウクライナ侵攻を受け「世界がロシアのガスから他のエネルギーへの移行を促すきっかけになる」とも強調した。22日にノルドストリーム2の認可手続きを停止すると発表したドイツのショルツ首相に謝意を示した。

ノルドストリーム2は独ロを海底で結んで天然ガスを輸送する全長約1200キロメートルのパイプライン。21年9月に完成したが、稼働していなかった。バイデン氏はロシアに対する欧州のエネルギー依存が高まると懸念し、計画にかねて反対してきた。

日本経済新聞 2022年2月24日 4:41 (2022年2月24日 7:41更新)
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