ロシア軍のウクライナに対する攻撃が続く中、全面侵攻開始直前の24日未明にウクライナのゼレンスキー大統領がSNS「テレグラム」の公式チャンネルへ投稿した1本の動画が注目されている。ロシア国民に対して「ロシア人は戦争を欲しているのだろうか」とロシア語で問いかけ、プーチン露大統領からの非難や決めつけに反論している。

 「私は一人のウクライナ市民として全てのロシア市民に向けて演説したい」。約9分間の動画では、スーツ姿のゼレンスキー氏が硬い表情でこう切り出す。

 ロシアが軍事侵攻で「ウクライナの解放」を主張する点については、「ウクライナ市民は元々自由だ」とまず訴えた。そして「非武装化と脱ナチズム化」を求めるロシアに対しては、こう反論する。

 「私たちがナチズム信奉者であると言っている。だが(第二次世界大戦で)ナチス・ドイツの打倒に800万以上の命をかけた(ウクライナの)市民たちがナチズムを支持するだろうか? 私がどうしたらナチズム信奉者であり得るというのだろうか? 私の祖父に言ってみてほしい。彼はソ連軍の歩兵部隊で(第二次大戦を)戦ったのだ」

 攻撃への対応については「私たちは戦争は不要だとよく分かっている。だが、もし私たちの国や自由や子どもたちの命を攻撃で奪い取ろうと試みるなら、私たちは自衛する」と抗戦の意思を強調した。

 プーチン氏が「ウクライナが核武装する恐れ」や「北大西洋条約機構(NATO)へ加盟した場合の脅威」を挙げた点には、「ウクライナがロシアにとって脅威ということは過去も現在も未来にもあり得ない」と断言。「私たちはロシアや英米からの安全の保障を求めている」と語った。

 ゼレンスキー氏は「ウクライナの市民も政府も平和を望んでいる」と述べ、「戦争で一番犠牲になるのは人々、戦争を止められるのも人々だ」とロシア市民の理性に訴えた。

 最後に「ロシア人は戦争を欲しているのだろうか? その答えはあなたたち、ロシア市民だけにかかっている」と呼びかけた。【ジェシュフ(ポーランド西部)真野森作】

毎日新聞 2022/2/26 10:22(最終更新 2/26 10:26) 849文字
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