雇用調整助成金の申請、年間50件から1日300件に急増…テレワーク進まぬ労働局が悲鳴「集団感染起きたらどうなる!?」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、事業主が払う休業手当を政府が補う雇用調整助成金(雇調金)の申請が急増し、受け付け業務を担う労働局の業務負担が増している。テレワーク推進を呼び掛ける立場ながら、在宅での勤務への移行も進んでおらず、職員からは「職場で集団で感染したら業務の運営が厳しくなる」と不安の声も聞かれる。
◆「リーマン・ショック時はるかに上回る忙しさ」
 2月上旬、千葉市中央区の雑居ビル内の一室。千葉労働局の非常勤職員ら約50人が雇調金の申請受け付け業務に追われていた。労働局近くで借りた部屋で、受け付けから審査、支給決定通知書の送付までを行う。電卓や分厚いファイル、チェックリストを手にした職員らは、ひっきりなしに鳴る電話に応対していた。
 厚生労働省によると、雇調金は景気の変動などにより事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が一時的に休業するなどした場合に支払われる。2020年4月、コロナの影響により経営が悪化した事業者に対して、1日当たりの支給上限額や助成率が引き上げられる特例措置が導入された。
 千葉労働局では、コロナ前は年間約50件だった申請件数は現在は1日約300件に上るようになり、申請受け付けのための非常勤職員と派遣職員を約100人増員した。
 提出された申請書類は不備があることも多く、職員らは電話で事業主に確認しながら手続きを進め、支給要件を尋ねる問い合わせにも応対する。担当者は「リーマン・ショック時をはるかに上回る忙しさ」と打ち明ける。
◆在宅勤務は「数%程度」
 申請受け付け業務のテレワークへの移行は進んでいない。コロナ感染拡大が始まった20年以降の雇調金の申請件数が90万件を超える東京労働局では、一部の職員から「在宅勤務でできないか」という声が上がっているというが、テレワークをしている職員は「体感として数%程度」(同労働局担当者)という。
 申請受け付け業務に携わる職員は「テレワークを導入するにはセキュリティー対策が必要。業務をこなしながらテレワークへの移行を短期間で行うのは難しい」と説明。一方で、「職場内でクラスターが発生したら業務が停止するかもしれない」と不安を語る。
 各地の労働局を管轄する厚労省は、コロナ感染拡大当初から、テレワークを推進してきた。東京労働局の担当者は「推進しながらも、厳しいところにあることは認識している」とするが、テレワーク態勢の強化について具体的な方策は示さなかった。(鈴木みのり)

北海学園大の川村雅則教授(労働経済)の話 雇調金の申請受け付け業務は事業者の休業を穴埋めするのに必要不可欠で、職場内で感染が起きたら国民生活に影響が出る。在宅でできる業務がないか、改めて検証する必要がある。

東京新聞 2022年2月28日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/162648