【ワシントン=吉田通夫】ウクライナに侵攻したロシアに対し、グーグルが広告を規制したり、米EV(電気自動車)大手テスラのマスク最高経営責任者(CEO)がウクライナに衛星によるネット接続サービスを提供したりと、ITなどの民間企業関係者らが軍事以外で「参戦」し、さまざまな形でのロシアに対する制限やウクライナ支援を強化している。国際的ハッカー集団もロシア政府へのサイバー攻撃を宣言した。
 グーグルの親会社アルファベットは2月26日、「ロシア国有メディアの資金調達を一時的に停止した」と発表した。国営メディア「ロシア・トゥデー(RT)」などが、動画配信サイト「ユーチューブ」などアルファベットのサービスを通じた広告収入を得られないようにした。
 ユーチューブはロシア側の偽情報やプロパガンダの拡散を防ぐため、ウクライナ国内ではRTなどの動画を閲覧できないよう規制している。ミャンマー国軍が昨年、市民を弾圧した際も、プロパガンダに利用していた国軍運営のチャンネルを規制していた。
 アルファベットの広報担当者は本紙の取材に「必要に応じてさらなる措置を講じる」としている。米マイクロソフトも、自社のニュース配信からRTを排除。会員制交流サイト(SNS)フェイスブックを運営するメタと、ツイッターも、ロシア国営メディアの広告を制限した。両社とも「情報戦」に利用されるのを防ぐため国営メディアの投稿内容のファクトチェックを厳格化したところ、当局から問題視され接続を制限されている。
 一方、テスラのマスク氏は2月26日、自身が率いる宇宙企業「スペースX」の人工衛星を通じ、ウクライナにネット接続サービスの提供を開始。ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル転換相がツイッターで「ロシアがウクライナを占領しようとしている」として支援を求め、マスク氏が応じた。ウクライナではロシアの侵攻を受け、ネットの遮断が相次いでいる。
 また、匿名ハッカーたちの国際集団アノニマスは同25日、ツイッターで「平和を望む」として「ロシア政府を攻撃する」と宣言。ロシア政府関連のサイトを相次いで閲覧不能にするなど「戦果」を報告している。ウクライナ政府は、侵攻を受ける前後からロシアからとされるサイバー攻撃を受けていた。

東京新聞 2022年3月1日 19時51分
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