声をつないで
女性兵士の投稿、世界に拡散 軍隊への参加進むウクライナ

 ロシアに侵攻されているウクライナで、武器を手に立ち上がる女性たちの投稿写真が、ネット交流サービス(SNS)で世界中に拡散している。もともと女性兵の割合が比較的高かったのに加え、民間人が参加する国防省傘下の「地域防衛隊」の中で、徹底抗戦を呼びかける役割を買ってでる女性も出ているようだ。

 「太陽は輝いているし、鳥は歌っている。きっとすべては良くなる」。2月下旬、軍服を着た女性が青空を背景にほほえみながらカメラに向かって語る動画がSNS上で広がった。動画の出所は不明だが、動画をシェアする投稿には女性が語る言葉を翻訳したとされる英文も添えられ、「心を打つ映像」「ウクライナに平和を」とたたえるコメントが相次いだ。

 2月23日には、元「ミス・ウクライナ」のアナスタシア・レナさんが「ウクライナとともに立ち上がろう」というハッシュタグとともに銃らしきものを抱える写真をSNSに投稿。「いいね」を示すハートマークが14万個以上に上り、欧米メディアも取り上げた。

 ウクライナはロシアがクリミア半島を強制編入した2014年以降、女性兵の募集に力を入れてきた。女性兵の数は全体の15%にあたる3万人以上。ロシアがウクライナ国境周辺に軍隊を集結させた昨年末には、防衛戦に備え、国防省が18〜60歳の女性に入隊を要請し、多くの女性が呼応して軍事訓練に加わった。

 一方、国防省は女性兵を総力戦のイメージ戦略に活用しようとしており、そのやり方を巡って批判も出ている。昨年7月、国防省が式典で披露する軍隊の行進練習を公開した際、ハイヒールを履いて行進する女性部隊が登場。女性政治家などから「性差別だ」と反発が起きた。

 戦争史やパブリックヒストリーに詳しい東京女子大の柳原伸洋准教授は、SNS時代の戦いは「市民一人一人に焦点があたっている一方で、イメージの固定化も同時に起きている」と指摘。勇敢な女性像だけを一面的にたたえる風潮は「戦争の本質を見失わせる」と語った。【五十嵐朋子、日下部元美】

毎日新聞 2022/3/6 17:00(最終更新 3/7 06:44) 834文字
https://mainichi.jp/articles/20220306/k00/00m/030/079000c
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