日本維新の会は27日の党大会で、野党第一党を獲得し「政権交代を目指す」との目標を記した活動方針を決定した。議席を伸ばした先の衆院選以降、現実路線で保守層へのアピールを強めており、夏の参院選では与党に代わり得る責任政党の地位を盤石にしたいところだ。ただ、地方組織の弱さがいまだ課題になっているほか、一部政策に関しては党内からも「維新らしさが失われた」と懸念の声が上がっている。

「永田町の常識は世間の非常識。納税者の感覚をもってお金の使い方を改めていくことがわれわれの一番の仕事だ」。松井一郎代表(大阪市長)は党大会で、「身を切る改革」によって生み出した財源を住民サービスの拡充に生かすべきだと強調した。

ロシアによるウクライナ侵攻もあり、維新は参院選を前に緊急事態に対応するための憲法改正、米国の核兵器を自国領土内や周辺海域などに配備して共同運用する「核共有」、エネルギー価格の急騰に備えた原発再稼働の必要性を率先して訴えている。自民や立憲民主党に満足できない保守・中道層に「維新は現実を直視する政党」だと印象付ける狙いも透けてみえる。

藤田文武幹事長は取材に対し「自民をピリッとさせられるような、まっとうな提案型の保守の野党が求められている」と説明。「岸田文雄政権は何をしたいのかが分からない。『新しい資本主義』など出してくる政策は全て曖昧だ。現実を直視して議論すべきことから逃げている」とも語る。自民幹部は「維新は目の上のたんこぶになりかねない」と警戒を強める。

一方で課題もある。最近は本拠地の大阪以外でも知事選の推薦候補が勝利するなど全国政党に脱皮する兆しがあるとはいえ、維新参院議員は「参院選のように大きな選挙になるとしんどい。選挙区も広いので、うちのように地方議員が少ないとポスターを張るのもなかなか大変だ」と漏らす。

また、維新が打ち出す政策の意義は党内でも広く共有されていない。政府が国民に一定額の現金を毎月無条件で支給する「ベーシックインカム」を軸とした最低所得保障制度の導入に関して、維新ベテラン議員は「まるで社会主義国家だ。『自立する個人』を基本としてきた維新にはなじまない。財源の説明に困るのではないか」と主張。結党時からの熱心な支持者が離れかねないと懸念を示した。(内藤慎二)

産経新聞 2022/3/27 19:15
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