東京に駐在する外国メディア特派員らの目に、私たちの社会はどう映っているのだろうか。韓国、フランス、英国、バングラデシュ、シンガポールの個性豊かな記者たちがつづるコラム「私が思う日本」。第51回は朝鮮日報(韓国)の崔銀京・東京特派員が、「他人に迷惑を掛けない」ことを美徳とし、時間や公共の場でのマナーを厳格に守るとされる日本社会に最近生じた変化について論じた。

 外国人に広く知られている日本人のイメージを一つ挙げるなら、「他人に迷惑を掛けないよう努力する」ではないか。韓国でよく耳にする日本人の全ての特徴は結局、他人に迷惑を掛けないという精神から出発しているように思われる。日本人は約束の時間を必ず守るし、大勢が集まる公共の場でも騒がず整然としている。幼いころから韓国社会も隣国に見習うべき点としてよく聞いていた特徴だ。

 ところが、いざ実際に日本で暮らしてみると、現実は異なると思うことも多い。代表的なのは路線バスの遅延だ。韓国にいた頃は「日本ではバスですら遅れない」という話をよく聞いた。バスの運行は道路状況に左右されやすいにもかかわらず、日本では定刻通りにバスが来る。それぐらい時間厳守が徹底されているとされていたのだ。しかし平日の午後に東京の住宅街でバスを待つと、定刻よりも1、2分はおろか、5分以上遅れることもざらにある。3年前に文京区に住んでいた頃はもっとひどかった。バスの運行間隔が完全に乱れ、同じ行き先のバスが数珠つなぎのように来ることもあった。

 当初は予想外の遅延に驚いたが、今は違う。「遅刻バス」の背景にあるいくつかの原因のうち、高齢化の進行が特に影響しているのではないかというのが私の個人的な考えだ。

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毎日新聞 2022/5/8 10:00(最終更新 5/8 10:00) 有料記事 2335文字
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