鮫島浩×望月衣塑子・徹底対談① 新聞報道が凋落した「特殊背景」 | FRIDAY
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2022年07月04日


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鮫島氏(右)と望月氏の対談は2時間に及んだ

今、注目のジャーナリストが2人いる。著書『朝日新聞政治部』(講談社)が4万部を超えるヒットとなっている元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏(50)と、菅義偉官房長官(当時)への鋭い質問で話題となった東京新聞社会部記者・望月衣塑子氏(46)だ。そんな2人が『FRIDAYデジタル』でガチンコ対談。記者クラブの問題点から参議院選挙の争点まで話題が広がった対談の様子を、3回に分け紹介する。その第1回だ。

望月 鮫島さんの『朝日新聞政治部』、興味深く読ませていただきました。デジタル化で世界のジャーナリズムがどんどん進化しているのに、逆に日本のメディアがなぜ劣化しているのか、明快に示されています。

鮫島 ありがとうございます。そこにこの本を書いた理由があります。新聞が面白くなくなったり、政治報道が陳腐に見えるようになったのは、変わるべき時に変わろうとしていないからだと思います。

望月 その一つが「番記者制度」や「記者クラブ制度」ですよね。

鮫島 その通りです。閉塞的な記者クラブの空気を良い意味でまったく読まない望月さんの大胆で豪快な質問で、菅官房長官の記者会見が劇的に面白くなったように、実は報道はいかようにも変われるはずなんです。しかし、今回の参院選報道を見ていてもいっこうに面白くならない。それはなぜなのか。参議院選の選挙報道を例に、なぜオールドメディアの政治報道がこんなにヘボいのかを二人で考えてみましょう。

上から目線の報道の弊害

望月 いいですね! 私は社会部記者ですが参議院選の取材にも参加していて、実は議席獲得が現実味を帯びている新勢力「参政党」をウォッチしています。もちろんそこは仕事でやっているわけなので、中立性や公平性が求められています。ところが、鮫島さんは「れいわ新選組」に注目されていて、ご自身が立ち上げた報道サイト「SAMEJIMA TIMES」では「れいわ推し」を表明しています。あれには驚きました。

鮫島 そうなんです。これは既存メディアの傍観報道が、まったく面白くないという問題意識から始めた試みです。記者が自分の立場を表明せずに、主体性もなく「これが政治だ」「これを読んどけ」みたいな上から目線の報道が政治をつまらなくしています。この傍観報道とはどこにも加担しない客観中立のことなのですが、そもそも中立なんて報道は存在しません。

望月 誰に取材するか、どの政党の話を記事にするかを決めるだけで、価値判断があるわけですからね。

鮫島 私もせっかく新聞記者からフリーのジャーナリストになったのだから、違和感のあった客観報道なんてもうやめようと。どうせなら、さらに踏み込んで自分が支持する政党を表明し、その理由を明確に示す主観的な政治報道に挑戦しようと思ったわけです。

望月 かなり踏み込みましたね。私も街頭演説を取材していて、ある候補者の応援演説にひろゆきさん(西村博之氏。『2ちゃんねる』開設者)が来ていたことが報じられました。著名人で話題になるから報道したのでしょうが、誰の候補者の応援に来たのかは報じられません(応援したのは乙武洋匡氏)。選挙期間中の中立性という理屈は分かるのですが、読者や視聴者にとっては肝心なところが伝えられないという違和感が残るでしょう。

対してSNSを見れば誰の応援に行ったかがすぐに分かるのですから、既存メディアの報道なんて見る必要がありません。海外に目を向ければ『ニューヨーク・タイムズ』でも『CNN』でも『FOXニュース』でも、支持政党を鮮明にしてガチンコの政策論争が展開されています。

なぜ日本のメディアはこれができないのか。そこには閉塞感があると思いますが、『朝日新聞政治部』に詳しく綴られた吉田調書事件(福島第一原発事故に関する吉田昌郎元所長の「吉田調書」で騒動となった朝日新聞の報道)はどんな影響を与えたのでしょうか。

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朝日新聞の記者魂が萎えたワケ


(略)

※省略していますので全文はソース元を参照して下さい。